聖書・Bible(新共同訳・聖書から)を読もう。  

    引用:聖書 新共同訳:(c)日本聖書協会 Japan Bible Society , Tokyo 1987,1988から


マタイによる福音書 1章18〜25節

18:イエス・キリストの誕生の次第はこうであった。母マリヤはヨセフと婚約していたが、まだ一緒にならない前に、聖霊によって身重になった。
19:夫ヨセフは正しい人であったので、彼女のことが公けになることを好まず、ひそかに離縁しようと決心した。
20:彼がこのことを思いめぐらしていたとき、主の使が夢に現れて言った、「ダビデの子ヨセフよ、心配しないでマリヤを妻として迎えるがよい。その胎内に宿っているものは聖霊によるのである。
21:彼女は男の子を産むであろう。その名をイエスと名づけなさい。彼は、おのれの民をそのもろもろの罪から救う者となるからである」。
22:すべてこれらのことが起ったのは、主が預言者によって言われたことの成就するためである。すなわち、
23:「見よ、おとめがみごもって男の子を産むであろう。その名はインマヌエルと呼ばれるであろう」。これは、「神われらと共にいます」という意味である。
24:ヨセフは眠りからさめた後に、主の使が命じたとおりに、マリヤを妻に迎えた。
25:しかし、子が生れるまでは、彼女を知ることはなかった。そして、その子をイエスと名づけた。
 
マタイによる福音書 1〜12節

1:イエスがヘロデ王の代に、ユダヤのベツレヘムでお生れになったとき、見よ、東からきた博士たちがエルサレムに着いて言った、2:「ユダヤ人の王としてお生れになったかたは、どこにおられますか。わたしたちは東の方でその星を見たので、そのかたを拝みにきました」。

3:ヘロデ王はこのことを聞いて不安を感じた。エルサレムの人々もみな、同様であった。
4:そこで王は祭司長たちと民の律法学者たちとを全部集めて、キリストはどこに生れるのかと、彼らに問いただした。
5:彼らは王に言った、「それはユダヤのベツレヘムです。預言者がこうしるしています、
6:『ユダの地、ベツレヘムよ、おまえはユダの君たちの中で、決して最も小さいものではない。おまえの中からひとりの君が出て、わが民イスラエルの牧者となるであろう』」。
7:そこで、ヘロデはひそかに博士たちを呼んで、星の現れた時について詳しく聞き、
8:彼らをベツレヘムにつかわして言った、「行って、その幼な子のことを詳しく調べ、見つかったらわたしに知らせてくれ。わたしも拝みに行くから」。
9:彼らは王の言うことを聞いて出かけると、見よ、彼らが東方で見た星が、彼らより先に進んで、幼な子のいる所まで行き、その上にとどまった。
10:彼らはその星を見て、非常な喜びにあふれた。
11:そして、家にはいって、母マリヤのそばにいる幼な子に会い、ひれ伏して拝み、また、宝の箱をあけて、黄金・乳香・没薬などの贈り物をささげた。
12:そして、夢でヘロデのところに帰るなとのみ告げを受けたので、他の道をとおって自分の国へ帰って行った。

                                        ▲戻る


マタイによる福音書 7章

◆人を裁くな

(1)「人を裁くな。あなたがたも裁かれないようにするためである。(2)あなたがたは、自分の裁く裁きで裁かれ、自分の量る秤で量り与えられる。(3)あなたは、兄弟の目にあるおが屑は見えるのに、なぜ自分の目の中の丸太に気づかないのか。(4)兄弟に向かって、『あなたの目からおが屑を取らせてください』と、どうして言えようか。自分の目に丸太があるではないか。(5)偽善者よ、まず自分の目から丸太を取り除け。そうすれば、はっきり見えるようになって、兄弟の目からおが屑を取り除くことができる。(6)神聖なものを犬に与えてはならず、また、真珠を豚に投げてはならない。それを足で踏みにじり、向き直ってあなたがたにかみついてくるだろう。」

◆求めなさい

(7)「求めなさい。そうすれば、与えられる。探しなさい。そうすれば、見つかる。門をたたきなさい。そうすれば、開かれる。(8)だれでも、求める者は受け、探す者は見つけ、門をたたく者には開かれる。(9)あなたがたのだれが、パンを欲しがる自分の子供に、石を与えるだろうか。(10)魚を欲しがるのに、蛇を与えるだろうか。(11)このように、あなたがたは悪い者でありながらも、自分の子供には良い物を与えることを知っている。まして、あなたがたの天の父は、求める者に良い物をくださるにちがいない。(12)だから、人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたがたも人にしなさい。これこそ律法と預言者である。」

◆狭い門

(13)「狭い門から入りなさい。滅びに通じる門は広く、その道も広々として、そこから入る者が多い。(14)しかし、命に通じる門はなんと狭く、その道も細いことか。それを見いだす者は少ない。」

◆実によって木を知る

(15)「偽預言者を警戒しなさい。彼らは羊の皮を身にまとってあなたがたのところに来るが、その内側は貪欲な狼である。(16)あなたがたは、その実で彼らを見分ける。茨からぶどうが、あざみからいちじくが採れるだろうか。(17)すべて良い木は良い実を結び、悪い木は悪い実を結ぶ。(18)良い木が悪い実を結ぶことはなく、また、悪い木が良い実を結ぶこともできない。(19)良い実を結ばない木はみな、切り倒されて火に投げ込まれる。(20)このように、あなたがたはその実で彼らを見分ける。」

◆あなたたちのことは知らない

(21)「わたしに向かって、『主よ、主よ』と言う者が皆、天の国に入るわけではない。わたしの天の父の御心を行う者だけが入るのである。(22)かの日には、大勢の者がわたしに、『主よ、主よ、わたしたちは御名によって預言し、御名によって悪霊を追い出し、御名によって奇跡をいろいろ行ったではありませんか』と言うであろう。(23)そのとき、わたしはきっぱりとこう言おう。『あなたたちのことは全然知らない。不法を働く者ども、わたしから離れ去れ。』」

◆家と土台

(24)「そこで、わたしのこれらの言葉を聞いて行う者は皆、岩の上に自分の家を建てた賢い人に似ている。(25)雨が降り、川があふれ、風が吹いてその家を襲っても、倒れなかった。岩を土台としていたからである。(26)わたしのこれらの言葉を聞くだけで行わない者は皆、砂の上に家を建てた愚かな人に似ている。(27)雨が降り、川があふれ、風が吹いてその家に襲いかかると、倒れて、その倒れ方がひどかった。」

(28)イエスがこれらの言葉を語り終えられると、群衆はその教えに非常に驚いた。(29)彼らの律法学者のようにではなく、権威ある者としてお教えになったからである。

 ▲戻る


マタイによる福音書 第8章

◆らい病を患っている人をいやす

(1)イエスが山を下りられると、大勢の群衆が従った。(2)すると、一人のらい病を患っている人がイエスに近寄り、ひれ伏して、「主よ、御心ならば、わたしを清くすることがおできになります」と言った。(3)イエスが手を差し伸べてその人に触れ、「よろしい。清くなれ」と言われると、たちまち、らい病は清くなった。(4)イエスはその人に言われた。「だれにも話さないように気をつけなさい。ただ、行って祭司に体を見せ、モーセが定めた供え物を献げて、人々に証明しなさい。」

◆百人隊長の僕をいやす

(5)さて、イエスがカファルナウムに入られると、一人の百人隊長が近づいて来て懇願し、(6)「主よ、わたしの僕が中風で家に寝込んで、ひどく苦しんでいます」と言った。(7)そこでイエスは、「わたしが行って、いやしてあげよう」と言われた。(8)すると、百人隊長は答えた。「主よ、わたしはあなたを自分の屋根の下にお迎えできるような者ではありません。ただ、ひと言おっしゃってください。そうすれば、わたしの僕はいやされます。(9)わたしも権威の下にある者ですが、わたしの下には兵隊がおり、一人に『行け』と言えば行きますし、他の一人に『来い』と言えば来ます。また、部下に『これをしろ』と言えば、そのとおりにします。」(10)イエスはこれを聞いて感心し、従っていた人々に言われた。「はっきり言っておく。イスラエルの中でさえ、わたしはこれほどの信仰を見たことがない。(11)言っておくが、いつか、東や西から大勢の人が来て、天の国でアブラハム、イサク、ヤコブと共に宴会の席に着く。(12)だが、御国の子らは、外の暗闇に追い出される。そこで泣きわめいて歯ぎしりするだろう。」(13)そして、百人隊長に言われた。「帰りなさい。あなたが信じたとおりになるように。」ちょうどそのとき、僕の病気はいやされた。                                    

◆多くの病人をいやす

(14)イエスはペトロの家に行き、そのしゅうとめが熱を出して寝込んでいるのを御覧になった。(15)イエスがその手に触れられると、熱は去り、しゅうとめは起き上がってイエスをもてなした。(16)夕方になると、人々は悪霊に取りつかれた者を大勢連れて来た。イエスは言葉で悪霊を追い出し、病人を皆いやされた。(17)それは、預言者イザヤを通して言われていたことが実現するためであった。

「彼はわたしたちの患いを負い、わたしたちの病を担った。」

◆弟子の覚悟

(18)イエスは、自分を取り囲んでいる群衆を見て、弟子たちに向こう岸に行くように命じられた。(19)そのとき、ある律法学者が近づいて、「先生、あなたがおいでになる所なら、どこへでも従って参ります」と言った。(20)イエスは言われた。「狐には穴があり、空の鳥には巣がある。だが、人の子には枕する所もない。」(21)ほかに、弟子の一人がイエスに、「主よ、まず、父を葬りに行かせてください」と言った。(22)イエスは言われた。「わたしに従いなさい。死んでいる者たちに、自分たちの死者を葬らせなさい。」

◆嵐を静める

(23)イエスが舟に乗り込まれると、弟子たちも従った。(24)そのとき、湖に激しい嵐が起こり、舟は波にのまれそうになった。イエスは眠っておられた。(25)弟子たちは近寄って起こし、「主よ、助けてください。おぼれそうです」と言った。(26)イエスは言われた。「なぜ怖がるのか。信仰の薄い者たちよ。」そして、起き上がって風と湖とをお叱りになると、すっかり凪になった。(27)人々は驚いて、「いったい、この方はどういう方なのだろう。風や湖さえも従うではないか」と言った。

◆悪霊に取りつかれたガダラの人をいやす

(28)イエスが向こう岸のガダラ人の地方に着かれると、悪霊に取りつかれた者が二人、墓場から出てイエスのところにやって来た。二人は非常に狂暴で、だれもその辺りの道を通れないほどであった。(29)突然、彼らは叫んだ。「神の子、かまわないでくれ。まだ、その時ではないのにここに来て、我々を苦しめるのか。」(30)はるかかなたで多くの豚の群れがえさをあさっていた。(31)そこで、悪霊どもはイエスに、「我々を追い出すのなら、あの豚の中にやってくれ」と願った。(32)イエスが、「行け」と言われると、悪霊どもは二人から出て、豚の中に入った。すると、豚の群れはみな崖を下って湖になだれ込み、水の中で死んだ。(33)豚飼いたちは逃げ出し、町に行って、悪霊に取りつかれた者のことなど一切を知らせた。(34)すると、町中の者がイエスに会おうとしてやって来た。そして、イエスを見ると、その地方から出て行ってもらいたいと言った。

                                        ▲戻る


マタイによる福音書 第9章

(1)イエスは舟に乗って湖を渡り、自分の町に帰って来られた。(2)すると、人々が中風の人を床に寝かせたまま、イエスのところへ連れて来た。イエスはその人たちの信仰を見て、中風の人に、「子よ、元気を出しなさい。あなたの罪は赦される」と言われた。(3)ところが、律法学者の中に、「この男は神を冒涜している」と思う者がいた。(4)イエスは、彼らの考えを見抜いて言われた。「なぜ、心の中で悪いことを考えているのか。(5)『あなたの罪は赦される』と言うのと、『起きて歩け』と言うのと、どちらが易しいか。(6)人の子が地上で罪を赦す権威を持っていることを知らせよう。」そして、中風の人に、「起き上がって床を担ぎ、家に帰りなさい」と言われた。(7)その人は起き上がり、家に帰って行った。(8)群衆はこれを見て恐ろしくなり、人間にこれほどの権威をゆだねられた神を賛美した。

◆マタイを弟子にする

(9)イエスはそこをたち、通りがかりに、マタイという人が収税所に座っているのを見かけて、「わたしに従いなさい」と言われた。彼は立ち上がってイエスに従った。(10)イエスがその家で食事をしておられたときのことである。徴税人や罪人も大勢やって来て、イエスや弟子たちと同席していた。(11)ファリサイ派の人々はこれを見て、弟子たちに、「なぜ、あなたたちの先生は徴税人や罪人と一緒に食事をするのか」と言った。(12)イエスはこれを聞いて言われた。「医者を必要とするのは、丈夫な人ではなく病人である。(13)『わたしが求めるのは憐れみであって、いけにえではない』とはどういう意味か、行って学びなさい。わたしが来たのは、正しい人を招くためではなく、罪人を招くためである。」 

◆断食についての問答

(14)そのころ、ヨハネの弟子たちがイエスのところに来て、「わたしたちとファリサイ派の人々はよく断食しているのに、なぜ、あなたの弟子たちは断食しないのですか」と言った。(15)イエスは言われた。「花婿が一緒にいる間、婚礼の客は悲しむことができるだろうか。しかし、花婿が奪い取られる時が来る。そのとき、彼らは断食することになる。(16)だれも、織りたての布から布切れを取って、古い服に継ぎを当てたりはしない。新しい布切れが服を引き裂き、破れはいっそうひどくなるからだ。(17)新しいぶどう酒を古い革袋に入れる者はいない。そんなことをすれば、革袋は破れ、ぶどう酒は流れ出て、革袋もだめになる。新しいぶどう酒は、新しい革袋に入れるものだ。そうすれば、両方とも長もちする。」

◆指導者の娘とイエスの服に触れる女

(18)イエスがこのようなことを話しておられると、ある指導者がそばに来て、ひれ伏して言った。「わたしの娘がたったいま死にました。でも、おいでになって手を置いてやってください。そうすれば、生き返るでしょう。」(19)そこで、イエスは立ち上がり、彼について行かれた。弟子たちも一緒だった。(20)すると、そこへ十二年間も患って出血が続いている女が近寄って来て、後ろからイエスの服の房に触れた。(21)「この方の服に触れさえすれば治してもらえる」と思ったからである。(22)イエスは振り向いて、彼女を見ながら言われた。「娘よ、元気になりなさい。あなたの信仰があなたを救った。」そのとき、彼女は治った。(23)イエスは指導者の家に行き、笛を吹く者たちや騒いでいる群衆を御覧になって、(24)言われた。「あちらへ行きなさい。少女は死んだのではない。眠っているのだ。」人々はイエスをあざ笑った。(25)群衆を外に出すと、イエスは家の中に入り、少女の手をお取りになった。すると、少女は起き上がった。(26)このうわさはその地方一帯に広まった。

◆二人の盲人をいやす

(27)イエスがそこからお出かけになると、二人の盲人が叫んで、「ダビデの子よ、わたしたちを憐れんでください」と言いながらついて来た。(28)イエスが家に入ると、盲人たちがそばに寄って来たので、「わたしにできると信じるのか」と言われた。二人は、「はい、主よ」と言った。(29)そこで、イエスが二人の目に触り、「あなたがたの信じているとおりになるように」と言われると、(30)二人は目が見えるようになった。イエスは、「このことは、だれにも知らせてはいけない」と彼らに厳しくお命じになった。(31)しかし、二人は外へ出ると、その地方一帯にイエスのことを言い広めた。

◆口の利けない人をいやす

(32)二人が出て行くと、悪霊に取りつかれて口の利けない人が、イエスのところに連れられて来た。(33)悪霊が追い出されると、口の利けない人がものを言い始めたので、群衆は驚嘆し、「こんなことは、今までイスラエルで起こったためしがない」と言った。(34)しかし、ファリサイ派の人々は、「あの男は悪霊の頭の力で悪霊を追い出している」と言った。

◆群衆に同情する

(35)イエスは町や村を残らず回って、会堂で教え、御国の福音を宣べ伝え、ありとあらゆる病気や患いをいやされた。(36)また、群衆が飼い主のいない羊のように弱り果て、打ちひしがれているのを見て、深く憐れまれた。(37)そこで、弟子たちに言われた。「収穫は多いが、働き手が少ない。(38)だから、収穫のために働き手を送ってくださるように、収穫の主に願いなさい。」

                                         ▲戻る


マタイによる福音書 10章

1イエスは十二人の弟子を呼び寄せ、汚れた霊に対する権能をお授けになった。汚れた霊を追い出し、あらゆる病気や患いをいやすためであった。
2十二使徒の名は次のとおりである。まずペトロと呼ばれるシモンとその兄弟アンデレ、ゼベダイの子ヤコブとその兄弟ヨハネ、
3フィリポとバルトロマイ、トマスと徴税人のマタイ、アルファイの子ヤコブとタダイ、
4熱心党のシモン、それにイエスを裏切ったイスカリオテのユダである。
 
◆十二人を派遣する
5イエスはこの十二人を派遣するにあたり、次のように命じられた。「異邦人の道に行ってはならない。また、サマリア人の町に入ってはならない。
6むしろ、イスラエルの家の失われた羊のところへ行きなさい。
7行って、『天の国は近づいた』と宣べ伝えなさい。
8病人をいやし、死者を生き返らせ、らい病を患っている人を清くし、悪霊を追い払いなさい。ただで受けたのだから、ただで与えなさい。
9帯の中に金貨も銀貨も銅貨も入れて行ってはならない。
10旅には袋も二枚の下着も、履物も杖も持って行ってはならない。働く者が食べ物を受けるのは当然である。
11町や村に入ったら、そこで、ふさわしい人はだれかをよく調べ、旅立つときまで、その人のもとにとどまりなさい。
12その家に入ったら、『平和があるように』と挨拶しなさい。
13家の人々がそれを受けるにふさわしければ、あなたがたの願う平和は彼らに与えられる。もし、ふさわしくなければ、その平和はあなたがたに返ってくる。
14あなたがたを迎え入れもせず、あなたがたの言葉に耳を傾けようともしない者がいたら、その家や町を出て行くとき、足の埃を払い落としなさい。
15はっきり言っておく。裁きの日には、この町よりもソドムやゴモラの地の方が軽い罰で済む。」
 
◆迫害を予告する
16「わたしはあなたがたを遣わす。それは、狼の群れに羊を送り込むようなものだ。だから、蛇のように賢く、鳩のように素直になりなさい。
17人々を警戒しなさい。あなたがたは地方法院に引き渡され、会堂で鞭打たれるからである。
18また、わたしのために総督や王の前に引き出されて、彼らや異邦人に証しをすることになる。
19引き渡されたときは、何をどう言おうかと心配してはならない。そのときには、言うべきことは教えられる。
20実は、話すのはあなたがたではなく、あなたがたの中で語ってくださる、父の霊である。
21兄弟は兄弟を、父は子を死に追いやり、子は親に反抗して殺すだろう。
22また、わたしの名のために、あなたがたはすべての人に憎まれる。しかし、最後まで耐え忍ぶ者は救われる。
23一つの町で迫害されたときは、他の町へ逃げて行きなさい。はっきり言っておく。あなたがたがイスラエルの町を回り終わらないうちに、人の子は来る。
24弟子は師にまさるものではなく、僕は主人にまさるものではない。
25弟子は師のように、僕は主人のようになれば、それで十分である。家の主人がベルゼブルと言われるのなら、その家族の者はもっとひどく言われることだろう。」
 
◆恐るべき者
26人々を恐れてはならない。覆われているもので現されないものはなく、隠されているもので知られずに済むものはないからである。
27わたしが暗闇であなたがたに言うことを、明るみで言いなさい。耳打ちされたことを、屋根の上で言い広めなさい。
28体は殺しても、魂を殺すことのできない者どもを恐れるな。むしろ、魂も体も地獄で滅ぼすことのできる方を恐れなさい。
29二羽の雀が一アサリオンで売られているではないか。だが、その一羽さえ、あなたがたの父のお許しがなければ、地に落ちることはない。
30あなたがたの髪の毛までも一本残らず数えられている。
31だから、恐れるな。あなたがたは、たくさんの雀よりもはるかにまさっている。」
 
◆イエスの仲間であると言い表す
32「だから、だれでも人々の前で自分をわたしの仲間であると言い表す者は、わたしも天の父の前で、その人をわたしの仲間であると言い表す。
33しかし、人々の前でわたしを知らないと言う者は、わたしも天の父の前で、その人を知らないと言う。」
 
◆平和ではなく剣を
34「わたしが来たのは地上に平和をもたらすためだ、と思ってはならない。平和ではなく、剣をもたらすために来たのだ。
35わたしは敵対させるために来たからである。人をその父に、/娘を母に、/嫁をしゅうとめに。
36こうして、自分の家族の者が敵となる。
37わたしよりも父や母を愛する者は、わたしにふさわしくない。わたしよりも息子や娘を愛する者も、わたしにふさわしくない。
38また、自分の十字架を担ってわたしに従わない者は、わたしにふさわしくない。
39自分の命を得ようとする者は、それを失い、わたしのために命を失う者は、かえってそれを得るのである。」
 
◆受け入れる人の報い
40「あなたがたを受け入れる人は、わたしを受け入れ、わたしを受け入れる人は、わたしを遣わされた方を受け入れるのである。
41預言者を預言者として受け入れる人は、預言者と同じ報いを受け、正しい者を正しい者として受け入れる人は、正しい者と同じ報いを受ける。
42はっきり言っておく。わたしの弟子だという理由で、この小さな者の一人に、冷たい水一杯でも飲ませてくれる人は、必ずその報いを受ける。」

                                        ▲戻る


マタイによる福音書 11章
 
1:イエスは十二人の弟子に指図を与え終わると、そこを去り、方々の町で教え、宣教された。
 
◆洗礼者ヨハネとイエス
2:ヨハネは牢の中で、キリストのなさったことを聞いた。そこで、自分の弟子たちを送って、
3:尋ねさせた。「来るべき方は、あなたでしょうか。それとも、ほかの方を待たなければなりませんか。」
4:イエスはお答えになった。「行って、見聞きしていることをヨハネに伝えなさい。
5:目の見えない人は見え、足の不自由な人は歩き、重い皮膚病を患っている人は清くなり、耳の聞こえない人は聞こえ、死者は生き返り、貧しい人は福音を告げ知らされている。
6:わたしにつまずかない人は幸いである。」
7:ヨハネの弟子たちが帰ると、イエスは群衆にヨハネについて話し始められた。「あなたがたは、何を見に荒れ野へ行ったのか。風にそよぐ葦か。
8:では、何を見に行ったのか。しなやかな服を着た人か。しなやかな服を着た人なら王宮にいる。
9:では、何を見に行ったのか。預言者か。そうだ。言っておく。預言者以上の者である。
10:『見よ、わたしはあなたより先に使者を遣わし、/あなたの前に道を準備させよう』/と書いてあるのは、この人のことだ。
11:はっきり言っておく。およそ女から生まれた者のうち、洗礼者ヨハネより偉大な者は現れなかった。しかし、天の国で最も小さな者でも、彼よりは偉大である。
12:彼が活動し始めたときから今に至るまで、天の国は力ずくで襲われており、激しく襲う者がそれを奪い取ろうとしている。
13:すべての預言者と律法が預言したのは、ヨハネの時までである。
14:あなたがたが認めようとすれば分かることだが、実は、彼は現れるはずのエリヤである。
15:耳のある者は聞きなさい。
16:今の時代を何にたとえたらよいか。広場に座って、ほかの者にこう呼びかけている子供たちに似ている。
17:『笛を吹いたのに、/踊ってくれなかった。葬式の歌をうたったのに、/悲しんでくれなかった。』
18:ヨハネが来て、食べも飲みもしないでいると、『あれは悪霊に取りつかれている』と言い、
19:人の子が来て、飲み食いすると、『見ろ、大食漢で大酒飲みだ。徴税人や罪人の仲間だ』と言う。しかし、知恵の正しさは、その働きによって証明される。」
 
◆悔い改めない町を叱る
20:それからイエスは、数多くの奇跡の行われた町々が悔い改めなかったので、叱り始められた。
21:「コラジン、お前は不幸だ。ベトサイダ、お前は不幸だ。お前たちのところで行われた奇跡が、ティルスやシドンで行われていれば、これらの町はとうの昔に粗布をまとい、灰をかぶって悔い改めたにちがいない。
22:しかし、言っておく。裁きの日にはティルスやシドンの方が、お前たちよりまだ軽い罰で済む。
23:また、カファルナウム、お前は、/天にまで上げられるとでも思っているのか。陰府にまで落とされるのだ。お前のところでなされた奇跡が、ソドムで行われていれば、あの町は今日まで無事だったにちがいない。
24:しかし、言っておく。裁きの日にはソドムの地の方が、お前よりまだ軽い罰で済むのである。」
 
◆わたしのもとに来なさい
25:そのとき、イエスはこう言われた。「天地の主である父よ、あなたをほめたたえます。これらのことを知恵ある者や賢い者には隠して、幼子のような者にお示しになりました。
26:そうです、父よ、これは御心に適うことでした。
27:すべてのことは、父からわたしに任せられています。父のほかに子を知る者はなく、子と、子が示そうと思う者のほかには、父を知る者はいません。
28:疲れた者、重荷を負う者は、だれでもわたしのもとに来なさい。休ませてあげよう。
29:わたしは柔和で謙遜な者だから、わたしの軛を負い、わたしに学びなさい。そうすれば、あなたがたは安らぎを得られる。
30:わたしの軛は負いやすく、わたしの荷は軽いからである。
                                   ▲戻る

マタイによる福音書12章
 
◆安息日に麦の穂を摘む
1:そのころ、ある安息日にイエスは麦畑を通られた。弟子たちは空腹になったので、麦の穂を摘んで食べ始めた。
2:ファリサイ派の人々がこれを見て、イエスに、「御覧なさい。あなたの弟子たちは、安息日にしてはならないことをしている」と言った。
3:そこで、イエスは言われた。「ダビデが自分も供の者たちも空腹だったときに何をしたか、読んだことがないのか。
4:神の家に入り、ただ祭司のほかには、自分も供の者たちも食べてはならない供えのパンを食べたではないか。
5:安息日に神殿にいる祭司は、安息日の掟を破っても罪にならない、と律法にあるのを読んだことがないのか。
6:言っておくが、神殿よりも偉大なものがここにある。
7:もし、『わたしが求めるのは憐れみであって、いけにえではない』という言葉の意味を知っていれば、あなたたちは罪もない人たちをとがめなかったであろう。
8:人の子は安息日の主なのである。」
 
◆手の萎えた人をいやす
9:イエスはそこを去って、会堂にお入りになった。
10:すると、片手の萎えた人がいた。人々はイエスを訴えようと思って、「安息日に病気を治すのは、律法で許されていますか」と尋ねた。
11:そこで、イエスは言われた。「あなたたちのうち、だれか羊を一匹持っていて、それが安息日に穴に落ちた場合、手で引き上げてやらない者がいるだろうか。
12:人間は羊よりもはるかに大切なものだ。だから、安息日に善いことをするのは許されている。」
13:そしてその人に、「手を伸ばしなさい」と言われた。伸ばすと、もう一方の手のように元どおり良くなった。
14:ファリサイ派の人々は出て行き、どのようにしてイエスを殺そうかと相談した。
 
◆神が選んだ僕
15:イエスはそれを知って、そこを立ち去られた。大勢の群衆が従った。イエスは皆の病気をいやして、
16:御自分のことを言いふらさないようにと戒められた。
17:それは、預言者イザヤを通して言われていたことが実現するためであった。
18:「見よ、わたしの選んだ僕。わたしの心に適った愛する者。この僕にわたしの霊を授ける。彼は異邦人に正義を知らせる。
19:彼は争わず、叫ばず、/その声を聞く者は大通りにはいない。
20:正義を勝利に導くまで、/彼は傷ついた葦を折らず、/くすぶる灯心を消さない。
21:異邦人は彼の名に望みをかける。」
 
◆ベルゼブル論争
22:そのとき、悪霊に取りつかれて目が見えず口の利けない人が、イエスのところに連れられて来て、イエスがいやされると、ものが言え、目が見えるようになった。
23:群衆は皆驚いて、「この人はダビデの子ではないだろうか」と言った。
24:しかし、ファリサイ派の人々はこれを聞き、「悪霊の頭ベルゼブルの力によらなければ、この者は悪霊を追い出せはしない」と言った。
25:イエスは、彼らの考えを見抜いて言われた。「どんな国でも内輪で争えば、荒れ果ててしまい、どんな町でも家でも、内輪で争えば成り立って行かない。
26:サタンがサタンを追い出せば、それは内輪もめだ。そんなふうでは、どうしてその国が成り立って行くだろうか。
27:わたしがベルゼブルの力で悪霊を追い出すのなら、あなたたちの仲間は何の力で追い出すのか。だから、彼ら自身があなたたちを裁く者となる。
28:しかし、わたしが神の霊で悪霊を追い出しているのであれば、神の国はあなたたちのところに来ているのだ。
29:また、まず強い人を縛り上げなければ、どうしてその家に押し入って、家財道具を奪い取ることができるだろうか。まず縛ってから、その家を略奪するものだ。
30:わたしに味方しない者はわたしに敵対し、わたしと一緒に集めない者は散らしている。
31:だから、言っておく。人が犯す罪や冒涜は、どんなものでも赦されるが、“霊”に対する冒涜は赦されない。
32:人の子に言い逆らう者は赦される。しかし、聖霊に言い逆らう者は、この世でも後の世でも赦されることがない。」
 
◆木とその実
33:「木が良ければその実も良いとし、木が悪ければその実も悪いとしなさい。木の良し悪しは、その結ぶ実で分かる。
34:蝮の子らよ、あなたたちは悪い人間であるのに、どうして良いことが言えようか。人の口からは、心にあふれていることが出て来るのである。
35:善い人は、良いものを入れた倉から良いものを取り出し、悪い人は、悪いものを入れた倉から悪いものを取り出してくる。
36:言っておくが、人は自分の話したつまらない言葉についてもすべて、裁きの日には責任を問われる。
37:あなたは、自分の言葉によって義とされ、また、自分の言葉によって罪ある者とされる。」
 
◆人々はしるしを欲しがる
38:すると、何人かの律法学者とファリサイ派の人々がイエスに、「先生、しるしを見せてください」と言った。
39:イエスはお答えになった。「よこしまで神に背いた時代の者たちはしるしを欲しがるが、預言者ヨナのしるしのほかには、しるしは与えられない。
40:つまり、ヨナが三日三晩、大魚の腹の中にいたように、人の子も三日三晩、大地の中にいることになる。
41:ニネベの人たちは裁きの時、今の時代の者たちと一緒に立ち上がり、彼らを罪に定めるであろう。ニネベの人々は、ヨナの説教を聞いて悔い改めたからである。ここに、ヨナにまさるものがある。
42:また、南の国の女王は裁きの時、今の時代の者たちと一緒に立ち上がり、彼らを罪に定めるであろう。この女王はソロモンの知恵を聞くために、地の果てから来たからである。ここに、ソロモンにまさるものがある。」
 
◆汚れた霊が戻って来る
43:「汚れた霊は、人から出て行くと、砂漠をうろつき、休む場所を探すが、見つからない。
44:それで、『出て来たわが家に戻ろう』と言う。戻ってみると、空き家になっており、掃除をして、整えられていた。
45:そこで、出かけて行き、自分よりも悪いほかの七つの霊を一緒に連れて来て、中に入り込んで、住み着く。そうなると、その人の後の状態は前よりも悪くなる。この悪い時代の者たちもそのようになろう。」
 
◆イエスの母、兄弟
46:イエスがなお群衆に話しておられるとき、その母と兄弟たちが、話したいことがあって外に立っていた。
47:そこで、ある人がイエスに、「御覧なさい。母上と御兄弟たちが、お話ししたいと外に立っておられます」と言った。
48:しかし、イエスはその人にお答えになった。「わたしの母とはだれか。わたしの兄弟とはだれか。」
49:そして、弟子たちの方を指して言われた。「見なさい。ここにわたしの母、わたしの兄弟がいる。
50:だれでも、わたしの天の父の御心を行う人が、わたしの兄弟、姉妹、また母である。」
                                      ▲戻る

マタイによる福音書 13章
 
◆「種を蒔く人」のたとえ
1:その日、イエスは家を出て、湖のほとりに座っておられた。
2:すると、大勢の群衆がそばに集まって来たので、イエスは舟に乗って腰を下ろされた。群衆は皆岸辺に立っていた。
3:イエスはたとえを用いて彼らに多くのことを語られた。「種を蒔く人が種蒔きに出て行った。
4:蒔いている間に、ある種は道端に落ち、鳥が来て食べてしまった。
5:ほかの種は、石だらけで土の少ない所に落ち、そこは土が浅いのですぐ芽を出した。
6:しかし、日が昇ると焼けて、根がないために枯れてしまった。
7:ほかの種は茨の間に落ち、茨が伸びてそれをふさいでしまった。
8:ところが、ほかの種は、良い土地に落ち、実を結んで、あるものは百倍、あるものは六十倍、あるものは三十倍にもなった。
9:耳のある者は聞きなさい。」
 
◆たとえを用いて話す理由
10:弟子たちはイエスに近寄って、「なぜ、あの人たちにはたとえを用いてお話しになるのですか」と言った。
11:イエスはお答えになった。「あなたがたには天の国の秘密を悟ることが許されているが、あの人たちには許されていないからである。
12:持っている人は更に与えられて豊かになるが、持っていない人は持っているものまでも取り上げられる。
13:だから、彼らにはたとえを用いて話すのだ。見ても見ず、聞いても聞かず、理解できないからである。
14:イザヤの預言は、彼らによって実現した。『あなたたちは聞くには聞くが、決して理解せず、/見るには見るが、決して認めない。
15:この民の心は鈍り、/耳は遠くなり、/目は閉じてしまった。こうして、彼らは目で見ることなく、/耳で聞くことなく、/心で理解せず、悔い改めない。わたしは彼らをいやさない。』
16:しかし、あなたがたの目は見ているから幸いだ。あなたがたの耳は聞いているから幸いだ。
17:はっきり言っておく。多くの預言者や正しい人たちは、あなたがたが見ているものを見たかったが、見ることができず、あなたがたが聞いているものを聞きたかったが、聞けなかったのである。」
 
◆「種を蒔く人」のたとえの説明
18:「だから、種を蒔く人のたとえを聞きなさい。
19:だれでも御国の言葉を聞いて悟らなければ、悪い者が来て、心の中に蒔かれたものを奪い取る。道端に蒔かれたものとは、こういう人である。
20:石だらけの所に蒔かれたものとは、御言葉を聞いて、すぐ喜んで受け入れるが、
21:自分には根がないので、しばらくは続いても、御言葉のために艱難や迫害が起こると、すぐにつまずいてしまう人である。
22:茨の中に蒔かれたものとは、御言葉を聞くが、世の思い煩いや富の誘惑が御言葉を覆いふさいで、実らない人である。
23:良い土地に蒔かれたものとは、御言葉を聞いて悟る人であり、あるものは百倍、あるものは六十倍、あるものは三十倍の実を結ぶのである。」
 
◆「毒麦」のたとえ
24:イエスは、別のたとえを持ち出して言われた。「天の国は次のようにたとえられる。ある人が良い種を畑に蒔いた。
25:人々が眠っている間に、敵が来て、麦の中に毒麦を蒔いて行った。
26:芽が出て、実ってみると、毒麦も現れた。
27:僕たちが主人のところに来て言った。『だんなさま、畑には良い種をお蒔きになったではありませんか。どこから毒麦が入ったのでしょう。』
28:主人は、『敵の仕業だ』と言った。そこで、僕たちが、『では、行って抜き集めておきましょうか』と言うと、
29:主人は言った。『いや、毒麦を集めるとき、麦まで一緒に抜くかもしれない。
30:刈り入れまで、両方とも育つままにしておきなさい。刈り入れの時、「まず毒麦を集め、焼くために束にし、麦の方は集めて倉に入れなさい」と、刈り取る者に言いつけよう。』」
 
◆「からし種」と「パン種」のたとえ
31:イエスは、別のたとえを持ち出して、彼らに言われた。「天の国はからし種に似ている。人がこれを取って畑に蒔けば、
32:どんな種よりも小さいのに、成長するとどの野菜よりも大きくなり、空の鳥が来て枝に巣を作るほどの木になる。」
33:また、別のたとえをお話しになった。「天の国はパン種に似ている。女がこれを取って三サトンの粉に混ぜると、やがて全体が膨れる。」
 
◆たとえを用いて語る
34:イエスはこれらのことをみな、たとえを用いて群衆に語られ、たとえを用いないでは何も語られなかった。
35:それは、預言者を通して言われていたことが実現するためであった。「わたしは口を開いてたとえを用い、/天地創造の時から隠されていたことを告げる。」
 
◆「毒麦」のたとえの説明
36:それから、イエスは群衆を後に残して家にお入りになった。すると、弟子たちがそばに寄って来て、「畑の毒麦のたとえを説明してください」と言った。
37:イエスはお答えになった。「良い種を蒔く者は人の子、
38:畑は世界、良い種は御国の子ら、毒麦は悪い者の子らである。
39:毒麦を蒔いた敵は悪魔、刈り入れは世の終わりのことで、刈り入れる者は天使たちである。
40:だから、毒麦が集められて火で焼かれるように、世の終わりにもそうなるのだ。
41:人の子は天使たちを遣わし、つまずきとなるものすべてと不法を行う者どもを自分の国から集めさせ、
42:燃え盛る炉の中に投げ込ませるのである。彼らは、そこで泣きわめいて歯ぎしりするだろう。
43:そのとき、正しい人々はその父の国で太陽のように輝く。耳のある者は聞きなさい。」
 
◆「天の国」のたとえ
44:「天の国は次のようにたとえられる。畑に宝が隠されている。見つけた人は、そのまま隠しておき、喜びながら帰り、持ち物をすっかり売り払って、その畑を買う。
45:また、天の国は次のようにたとえられる。商人が良い真珠を探している。
46:高価な真珠を一つ見つけると、出かけて行って持ち物をすっかり売り払い、それを買う。
47:また、天の国は次のようにたとえられる。網が湖に投げ降ろされ、いろいろな魚を集める。
48:網がいっぱいになると、人々は岸に引き上げ、座って、良いものは器に入れ、悪いものは投げ捨てる。
49:世の終わりにもそうなる。天使たちが来て、正しい人々の中にいる悪い者どもをより分け、
50:燃え盛る炉の中に投げ込むのである。悪い者どもは、そこで泣きわめいて歯ぎしりするだろう。」
 
◆天の国のことを学んだ学者
51:「あなたがたは、これらのことがみな分かったか。」弟子たちは、「分かりました」と言った。
52:そこで、イエスは言われた。「だから、天の国のことを学んだ学者は皆、自分の倉から新しいものと古いものを取り出す一家の主人に似ている。」
 
◆ナザレで受け入れられない
53:イエスはこれらのたとえを語り終えると、そこを去り、
54:故郷にお帰りになった。会堂で教えておられると、人々は驚いて言った。「この人は、このような知恵と奇跡を行う力をどこから得たのだろう。
55:この人は大工の息子ではないか。母親はマリアといい、兄弟はヤコブ、ヨセフ、シモン、ユダではないか。
56:姉妹たちは皆、我々と一緒に住んでいるではないか。この人はこんなことをすべて、いったいどこから得たのだろう。」
57:このように、人々はイエスにつまずいた。イエスは、「預言者が敬われないのは、その故郷、家族の間だけである」と言い、
58:人々が不信仰だったので、そこではあまり奇跡をなさらなかった。

                                         ▲戻る


マタイによる福音書14章

◆洗礼者ヨハネ、殺される
1:そのころ、領主ヘロデはイエスの評判を聞き、
2:家来たちにこう言った。「あれは洗礼者ヨハネだ。死者の中から生き返ったのだ。だから、奇跡を行う力が彼に働いている。」
3:実はヘロデは、自分の兄弟フィリポの妻ヘロディアのことでヨハネを捕らえて縛り、牢に入れていた。
4:ヨハネが、「あの女と結婚することは律法で許されていない」とヘロデに言ったからである。
5:ヘロデはヨハネを殺そうと思っていたが、民衆を恐れた。人々がヨハネを預言者と思っていたからである。
6:ところが、ヘロデの誕生日にヘロディアの娘が、皆の前で踊りをおどり、ヘロデを喜ばせた。
7:それで彼は娘に、「願うものは何でもやろう」と誓って約束した。
8:すると、娘は母親に唆されて、「洗礼者ヨハネの首を盆に載せて、この場でください」と言った。
9:王は心を痛めたが、誓ったことではあるし、また客の手前、それを与えるように命じ、
10:人を遣わして、牢の中でヨハネの首をはねさせた。
11:その首は盆に載せて運ばれ、少女に渡り、少女はそれを母親に持って行った。
12:それから、ヨハネの弟子たちが来て、遺体を引き取って葬り、イエスのところに行って報告した。
 

◆五千人に食べ物を与える

13:イエスはこれを聞くと、舟に乗ってそこを去り、ひとり人里離れた所に退かれた。しかし、群衆はそのことを聞き、方々の町から歩いて後を追った。
14:イエスは舟から上がり、大勢の群衆を見て深く憐れみ、その中の病人をいやされた。
15:夕暮れになったので、弟子たちがイエスのそばに来て言った。「ここは人里離れた所で、もう時間もたちました。群衆を解散させてください。そうすれば、自分で村へ食べ物を買いに行くでしょう。」
16:イエスは言われた。「行かせることはない。あなたがたが彼らに食べる物を与えなさい。」
17:弟子たちは言った。「ここにはパン五つと魚二匹しかありません。」
18:イエスは、「それをここに持って来なさい」と言い、
19:群衆には草の上に座るようにお命じになった。そして、五つのパンと二匹の魚を取り、天を仰いで賛美の祈りを唱え、パンを裂いて弟子たちにお渡しになった。弟子たちはそのパンを群衆に与えた。
20:すべての人が食べて満腹した。そして、残ったパンの屑を集めると、十二の籠いっぱいになった。
21:食べた人は、女と子供を別にして、男が五千人ほどであった。
 

◆湖の上を歩く

22:それからすぐ、イエスは弟子たちを強いて舟に乗せ、向こう岸へ先に行かせ、その間に群衆を解散させられた。
23:群衆を解散させてから、祈るためにひとり山にお登りになった。夕方になっても、ただひとりそこにおられた。
24:ところが、舟は既に陸から何スタディオンか離れており、逆風のために波に悩まされていた。
25:夜が明けるころ、イエスは湖の上を歩いて弟子たちのところに行かれた。
26:弟子たちは、イエスが湖上を歩いておられるのを見て、「幽霊だ」と言っておびえ、恐怖のあまり叫び声をあげた。
27:イエスはすぐ彼らに話しかけられた。「安心しなさい。わたしだ。恐れることはない。」
28:すると、ペトロが答えた。「主よ、あなたでしたら、わたしに命令して、水の上を歩いてそちらに行かせてください。」
29:イエスが「来なさい」と言われたので、ペトロは舟から降りて水の上を歩き、イエスの方へ進んだ。
30:しかし、強い風に気がついて怖くなり、沈みかけたので、「主よ、助けてください」と叫んだ。
31:イエスはすぐに手を伸ばして捕まえ、「信仰の薄い者よ、なぜ疑ったのか」と言われた。
32:そして、二人が舟に乗り込むと、風は静まった。
33:舟の中にいた人たちは、「本当に、あなたは神の子です」と言ってイエスを拝んだ。
 

◆ゲネサレトで病人をいやす

34:こうして、一行は湖を渡り、ゲネサレトという土地に着いた。
35:土地の人々は、イエスだと知って、付近にくまなく触れ回った。それで、人々は病人を皆イエスのところに連れて来て、
36:その服のすそにでも触れさせてほしいと願った。触れた者は皆いやされた。

                                         ▲戻る


マタイによる福音書15章
 
◆昔の人の言い伝え
1:そのころ、ファリサイ派の人々と律法学者たちが、エルサレムからイエスのもとへ来て言った。
2:「なぜ、あなたの弟子たちは、昔の人の言い伝えを破るのですか。彼らは食事の前に手を洗いません。」
3:そこで、イエスはお答えになった。「なぜ、あなたたちも自分の言い伝えのために、神の掟を破っているのか。
4:神は、『父と母を敬え』と言い、『父または母をののしる者は死刑に処せられるべきである』とも言っておられる。
5:それなのに、あなたたちは言っている。『父または母に向かって、「あなたに差し上げるべきものは、神への供え物にする」と言う者は、
6:父を敬わなくてもよい』と。こうして、あなたたちは、自分の言い伝えのために神の言葉を無にしている。
7:偽善者たちよ、イザヤは、あなたたちのことを見事に預言したものだ。
8:『この民は口先ではわたしを敬うが、/その心はわたしから遠く離れている。
9:人間の戒めを教えとして教え、/むなしくわたしをあがめている。』」
10:それから、イエスは群衆を呼び寄せて言われた。「聞いて悟りなさい。
11:口に入るものは人を汚さず、口から出て来るものが人を汚すのである。」
12:そのとき、弟子たちが近寄って来て、「ファリサイ派の人々がお言葉を聞いて、つまずいたのをご存じですか」と言った。
13:イエスはお答えになった。「わたしの天の父がお植えにならなかった木は、すべて抜き取られてしまう。
14:そのままにしておきなさい。彼らは盲人の道案内をする盲人だ。盲人が盲人の道案内をすれば、二人とも穴に落ちてしまう。」
15:するとペトロが、「そのたとえを説明してください」と言った。
16:イエスは言われた。「あなたがたも、まだ悟らないのか。
17:すべて口に入るものは、腹を通って外に出されることが分からないのか。
18:しかし、口から出て来るものは、心から出て来るので、これこそ人を汚す。
19:悪意、殺意、姦淫、みだらな行い、盗み、偽証、悪口などは、心から出て来るからである。
20:これが人を汚す。しかし、手を洗わずに食事をしても、そのことは人を汚すものではない。」
 
◆カナンの女の信仰
21:イエスはそこをたち、ティルスとシドンの地方に行かれた。
22:すると、この地に生まれたカナンの女が出て来て、「主よ、ダビデの子よ、わたしを憐れんでください。娘が悪霊にひどく苦しめられています」と叫んだ。
23:しかし、イエスは何もお答えにならなかった。そこで、弟子たちが近寄って来て願った。「この女を追い払ってください。叫びながらついて来ますので。」
24:イエスは、「わたしは、イスラエルの家の失われた羊のところにしか遣わされていない」とお答えになった。
25:しかし、女は来て、イエスの前にひれ伏し、「主よ、どうかお助けください」と言った。
26:イエスが、「子供たちのパンを取って小犬にやってはいけない」とお答えになると、
27:女は言った。「主よ、ごもっともです。しかし、小犬も主人の食卓から落ちるパン屑はいただくのです。」
28:そこで、イエスはお答えになった。「婦人よ、あなたの信仰は立派だ。あなたの願いどおりになるように。」そのとき、娘の病気はいやされた。
 
◆大勢の病人をいやす
29:イエスはそこを去って、ガリラヤ湖のほとりに行かれた。そして、山に登って座っておられた。
30:大勢の群衆が、足の不自由な人、目の見えない人、体の不自由な人、口の利けない人、その他多くの病人を連れて来て、イエスの足もとに横たえたので、イエスはこれらの人々をいやされた。
31:群衆は、口の利けない人が話すようになり、体の不自由な人が治り、足の不自由な人が歩き、目の見えない人が見えるようになったのを見て驚き、イスラエルの神を賛美した。
 
◆四千人に食べ物を与える
32:イエスは弟子たちを呼び寄せて言われた。「群衆がかわいそうだ。もう三日もわたしと一緒にいるのに、食べ物がない。空腹のままで解散させたくはない。途中で疲れきってしまうかもしれない。」
33:弟子たちは言った。「この人里離れた所で、これほど大勢の人に十分食べさせるほどのパンが、どこから手に入るでしょうか。」
34:イエスが「パンは幾つあるか」と言われると、弟子たちは、「七つあります。それに、小さい魚が少しばかり」と答えた。
35:そこで、イエスは地面に座るように群衆に命じ、
36:七つのパンと魚を取り、感謝の祈りを唱えてこれを裂き、弟子たちにお渡しになった。弟子たちは群衆に配った。
37:人々は皆、食べて満腹した。残ったパンの屑を集めると、七つの籠いっぱいになった。
38:食べた人は、女と子供を別にして、男が四千人であった。
39:イエスは群衆を解散させ、舟に乗ってマガダン地方に行かれた。

                                         ▲戻る


マタイによる福音書16章

◆人々はしるしを欲しがる

 
1:ファリサイ派とサドカイ派の人々が来て、イエスを試そうとして、天からのしるしを見せてほしいと願った。
2:イエスはお答えになった。「あなたたちは、夕方には『夕焼けだから、晴れだ』と言い、
3:朝には『朝焼けで雲が低いから、今日は嵐だ』と言う。このように空模様を見分けることは知っているのに、時代のしるしは見ることができないのか。
4:よこしまで神に背いた時代の者たちはしるしを欲しがるが、ヨナのしるしのほかには、しるしは与えられない。」そして、イエスは彼らを後に残して立ち去られた。
 
◆ファリサイ派とサドカイ派の人々のパン種
5:弟子たちは向こう岸に行ったが、パンを持って来るのを忘れていた。
6:イエスは彼らに、「ファリサイ派とサドカイ派の人々のパン種によく注意しなさい」と言われた。
7:弟子たちは、「これは、パンを持って来なかったからだ」と論じ合っていた。
8:イエスはそれに気づいて言われた。「信仰の薄い者たちよ、なぜ、パンを持っていないことで論じ合っているのか。
9:まだ、分からないのか。覚えていないのか。パン五つを五千人に分けたとき、残りを幾籠に集めたか。
10:また、パン七つを四千人に分けたときは、残りを幾籠に集めたか。
11:パンについて言ったのではないことが、どうして分からないのか。ファリサイ派とサドカイ派の人々のパン種に注意しなさい。」
12:そのときようやく、弟子たちは、イエスが注意を促されたのは、パン種のことではなく、ファリサイ派とサドカイ派の人々の教えのことだと悟った。
 
◆ペトロ、信仰を言い表す
13:イエスは、フィリポ・カイサリア地方に行ったとき、弟子たちに、「人々は、人の子のことを何者だと言っているか」とお尋ねになった。
14:弟子たちは言った。「『洗礼者ヨハネだ』と言う人も、『エリヤだ』と言う人もいます。ほかに、『エレミヤだ』とか、『預言者の一人だ』と言う人もいます。」
15:イエスが言われた。「それでは、あなたがたはわたしを何者だと言うのか。」
16:シモン・ペトロが、「あなたはメシア、生ける神の子です」と答えた。
17:すると、イエスはお答えになった。「シモン・バルヨナ、あなたは幸いだ。あなたにこのことを現したのは、人間ではなく、わたしの天の父なのだ。
18:わたしも言っておく。あなたはペトロ。わたしはこの岩の上にわたしの教会を建てる。陰府の力もこれに対抗できない。
19:わたしはあなたに天の国の鍵を授ける。あなたが地上でつなぐことは、天上でもつながれる。あなたが地上で解くことは、天上でも解かれる。」
20:それから、イエスは、御自分がメシアであることをだれにも話さないように、と弟子たちに命じられた。
 
◆イエス、死と復活を予告する
21:このときから、イエスは、御自分が必ずエルサレムに行って、長老、祭司長、律法学者たちから多くの苦しみを受けて殺され、三日目に復活することになっている、と弟子たちに打ち明け始められた。
22:すると、ペトロはイエスをわきへお連れして、いさめ始めた。「主よ、とんでもないことです。そんなことがあってはなりません。」
23:イエスは振り向いてペトロに言われた。「サタン、引き下がれ。あなたはわたしの邪魔をする者。神のことを思わず、人間のことを思っている。」
24:それから、弟子たちに言われた。「わたしについて来たい者は、自分を捨て、自分の十字架を背負って、わたしに従いなさい。
25:自分の命を救いたいと思う者は、それを失うが、わたしのために命を失う者は、それを得る。
26:人は、たとえ全世界を手に入れても、自分の命を失ったら、何の得があろうか。自分の命を買い戻すのに、どんな代価を支払えようか。
27:人の子は、父の栄光に輝いて天使たちと共に来るが、そのとき、それぞれの行いに応じて報いるのである。
28:はっきり言っておく。ここに一緒にいる人々の中には、人の子がその国と共に来るのを見るまでは、決して死なない者がいる。」

                                         ▲戻る


マタイによる福音書 17章

◆イエスの姿が変わる

1:六日の後、イエスは、ペトロ、それにヤコブとその兄弟ヨハネだけを連れて、高い山に登られた。
2:イエスの姿が彼らの目の前で変わり、顔は太陽のように輝き、服は光のように白くなった。
3:見ると、モーセとエリヤが現れ、イエスと語り合っていた。
4:ペトロが口をはさんでイエスに言った。「主よ、わたしたちがここにいるのは、すばらしいことです。お望みでしたら、わたしがここに仮小屋を三つ建てましょう。一つはあなたのため、一つはモーセのため、もう一つはエリヤのためです。」
5:ペトロがこう話しているうちに、光り輝く雲が彼らを覆った。すると、「これはわたしの愛する子、わたしの心に適う者。これに聞け」という声が雲の中から聞こえた。
6:弟子たちはこれを聞いてひれ伏し、非常に恐れた。
7:イエスは近づき、彼らに手を触れて言われた。「起きなさい。恐れることはない。」
8:彼らが顔を上げて見ると、イエスのほかにはだれもいなかった。
9:一同が山を下りるとき、イエスは、「人の子が死者の中から復活するまで、今見たことをだれにも話してはならない」と弟子たちに命じられた。
10:彼らはイエスに、「なぜ、律法学者は、まずエリヤが来るはずだと言っているのでしょうか」と尋ねた。
11:イエスはお答えになった。「確かにエリヤが来て、すべてを元どおりにする。
12:言っておくが、エリヤは既に来たのだ。人々は彼を認めず、好きなようにあしらったのである。人の子も、そのように人々から苦しめられることになる。」
13:そのとき、弟子たちは、イエスが洗礼者ヨハネのことを言われたのだと悟った。

◆悪霊に取りつかれた子をいやす

14:一同が群衆のところへ行くと、ある人がイエスに近寄り、ひざまずいて、
15:言った。「主よ、息子を憐れんでください。てんかんでひどく苦しんでいます。度々火の中や水の中に倒れるのです。
16:お弟子たちのところに連れて来ましたが、治すことができませんでした。」
17:イエスはお答えになった。「なんと信仰のない、よこしまな時代なのか。いつまでわたしはあなたがたと共にいられようか。いつまで、あなたがたに我慢しなければならないのか。その子をここに、わたしのところに連れて来なさい。」
18:そして、イエスがお叱りになると、悪霊は出て行き、そのとき子供はいやされた。
19:弟子たちはひそかにイエスのところに来て、「なぜ、わたしたちは悪霊を追い出せなかったのでしょうか」と言った。
20:イエスは言われた。「信仰が薄いからだ。はっきり言っておく。もし、からし種一粒ほどの信仰があれば、この山に向かって、『ここから、あそこに移れ』と命じても、そのとおりになる。あなたがたにできないことは何もない。」
21>:しかし、この種のものは、祈りと断食によらなければ出て行かない。
  (底本に節が欠けている個所の異本による訳文)

◆再び自分の死と復活を予告する

22:一行がガリラヤに集まったとき、イエスは言われた。「人の子は人々の手に引き渡されようとしている。
23:そして殺されるが、三日目に復活する。」弟子たちは非常に悲しんだ。

◆神殿税を納める

24:一行がカファルナウムに来たとき、神殿税を集める者たちがペトロのところに来て、「あなたたちの先生は神殿税を納めないのか」と言った。
25:ペトロは、「納めます」と言った。そして家に入ると、イエスの方から言いだされた。「シモン、あなたはどう思うか。地上の王は、税や貢ぎ物をだれから取り立てるのか。自分の子供たちからか、それともほかの人々からか。」
26:ペトロが「ほかの人々からです」と答えると、イエスは言われた。「では、子供たちは納めなくてよいわけだ。
27:しかし、彼らをつまずかせないようにしよう。湖に行って釣りをしなさい。最初に釣れた魚を取って口を開けると、銀貨が一枚見つかるはずだ。それを取って、わたしとあなたの分として納めなさい。」

                                         ▲戻る


マタイによる福音書 18章

◆天の国でいちばん偉い者

1:そのとき、弟子たちがイエスのところに来て、「いったいだれが、天の国でいちばん偉いのでしょうか」と言った。
2:そこで、イエスは一人の子供を呼び寄せ、彼らの中に立たせて、
3:言われた。「はっきり言っておく。心を入れ替えて子供のようにならなければ、決して天の国に入ることはできない。
4:自分を低くして、この子供のようになる人が、天の国でいちばん偉いのだ。
5:わたしの名のためにこのような一人の子供を受け入れる者は、わたしを受け入れるのである。」
 
◆罪への誘惑
6:「しかし、わたしを信じるこれらの小さな者の一人をつまずかせる者は、大きな石臼を首に懸けられて、深い海に沈められる方がましである。
7:世は人をつまずかせるから不幸だ。つまずきは避けられない。だが、つまずきをもたらす者は不幸である。
8:もし片方の手か足があなたをつまずかせるなら、それを切って捨ててしまいなさい。両手両足がそろったまま永遠の火に投げ込まれるよりは、片手片足になっても命にあずかる方がよい。
9:もし片方の目があなたをつまずかせるなら、えぐり出して捨ててしまいなさい。両方の目がそろったまま火の地獄に投げ込まれるよりは、一つの目になっても命にあずかる方がよい。」
 
◆「迷い出た羊」のたとえ
10:「これらの小さな者を一人でも軽んじないように気をつけなさい。言っておくが、彼らの天使たちは天でいつもわたしの天の父の御顔を仰いでいるのである。
11>:人の子は、失われたものを救うために来た。
  (底本に節が欠けている個所の異本による訳文)
12:あなたがたはどう思うか。ある人が羊を百匹持っていて、その一匹が迷い出たとすれば、九十九匹を山に残しておいて、迷い出た一匹を捜しに行かないだろうか。
13:はっきり言っておくが、もし、それを見つけたら、迷わずにいた九十九匹より、その一匹のことを喜ぶだろう。
14:そのように、これらの小さな者が一人でも滅びることは、あなたがたの天の父の御心ではない。」
 
◆兄弟の忠告
15:「兄弟があなたに対して罪を犯したなら、行って二人だけのところで忠告しなさい。言うことを聞き入れたら、兄弟を得たことになる。
16:聞き入れなければ、ほかに一人か二人、一緒に連れて行きなさい。すべてのことが、二人または三人の証人の口によって確定されるようになるためである。
17:それでも聞き入れなければ、教会に申し出なさい。教会の言うことも聞き入れないなら、その人を異邦人か徴税人と同様に見なしなさい。
18:はっきり言っておく。あなたがたが地上でつなぐことは、天上でもつながれ、あなたがたが地上で解くことは、天上でも解かれる。
19:また、はっきり言っておくが、どんな願い事であれ、あなたがたのうち二人が地上で心を一つにして求めるなら、わたしの天の父はそれをかなえてくださる。
20:二人または三人がわたしの名によって集まるところには、わたしもその中にいるのである。」
 
◆「仲間を赦さない家来」のたとえ
21:そのとき、ペトロがイエスのところに来て言った。「主よ、兄弟がわたしに対して罪を犯したなら、何回赦すべきでしょうか。七回までですか。」
22:イエスは言われた。「あなたに言っておく。七回どころか七の七十倍までも赦しなさい。
23:そこで、天の国は次のようにたとえられる。ある王が、家来たちに貸した金の決済をしようとした。
24:決済し始めたところ、一万タラントン借金している家来が、王の前に連れて来られた。
25:しかし、返済できなかったので、主君はこの家来に、自分も妻も子も、また持ち物も全部売って返済するように命じた。
26:家来はひれ伏し、『どうか待ってください。きっと全部お返しします』としきりに願った。
27:その家来の主君は憐れに思って、彼を赦し、その借金を帳消しにしてやった。
28:ところが、この家来は外に出て、自分に百デナリオンの借金をしている仲間に出会うと、捕まえて首を絞め、『借金を返せ』と言った。
29:仲間はひれ伏して、『どうか待ってくれ。返すから』としきりに頼んだ。
30:しかし、承知せず、その仲間を引っぱって行き、借金を返すまでと牢に入れた。
31:仲間たちは、事の次第を見て非常に心を痛め、主君の前に出て事件を残らず告げた。
32:そこで、主君はその家来を呼びつけて言った。『不届きな家来だ。お前が頼んだから、借金を全部帳消しにしてやったのだ。
33:わたしがお前を憐れんでやったように、お前も自分の仲間を憐れんでやるべきではなかったか。』
34:そして、主君は怒って、借金をすっかり返済するまでと、家来を牢役人に引き渡した。
35:あなたがたの一人一人が、心から兄弟を赦さないなら、わたしの天の父もあなたがたに同じようになさるであろう。」

                                         ▲戻る


マタイによる福音書 19章

◆離縁について教える
1:イエスはこれらの言葉を語り終えると、ガリラヤを去り、ヨルダン川の向こう側のユダヤ地方に行かれた。
2:大勢の群衆が従った。イエスはそこで人々の病気をいやされた。
3:ファリサイ派の人々が近寄り、イエスを試そうとして、「何か理由があれば、夫が妻を離縁することは、律法に適っているでしょうか」と言った。
4:イエスはお答えになった。「あなたたちは読んだことがないのか。創造主は初めから人を男と女とにお造りになった。」
5:そして、こうも言われた。「それゆえ、人は父母を離れてその妻と結ばれ、二人は一体となる。
6:だから、二人はもはや別々ではなく、一体である。従って、神が結び合わせてくださったものを、人は離してはならない。」
7:すると、彼らはイエスに言った。「では、なぜモーセは、離縁状を渡して離縁するように命じたのですか。」
8:イエスは言われた。「あなたたちの心が頑固なので、モーセは妻を離縁することを許したのであって、初めからそうだったわけではない。
9:言っておくが、不法な結婚でもないのに妻を離縁して、他の女を妻にする者は、姦通の罪を犯すことになる。」
10:弟子たちは、「夫婦の間柄がそんなものなら、妻を迎えない方がましです」と言った。
11:イエスは言われた。「だれもがこの言葉を受け入れるのではなく、恵まれた者だけである。
12:結婚できないように生まれついた者、人から結婚できないようにされた者もいるが、天の国のために結婚しない者もいる。これを受け入れることのできる人は受け入れなさい。」
 
◆子供を祝福する
13:そのとき、イエスに手を置いて祈っていただくために、人々が子供たちを連れて来た。弟子たちはこの人々を叱った。
14:しかし、イエスは言われた。「子供たちを来させなさい。わたしのところに来るのを妨げてはならない。天の国はこのような者たちのものである。」
15:そして、子供たちに手を置いてから、そこを立ち去られた。
 
◆金持ちの青年
16:さて、一人の男がイエスに近寄って来て言った。「先生、永遠の命を得るには、どんな善いことをすればよいのでしょうか。」
17:イエスは言われた。「なぜ、善いことについて、わたしに尋ねるのか。善い方はおひとりである。もし命を得たいのなら、掟を守りなさい。」
18:男が「どの掟ですか」と尋ねると、イエスは言われた。「『殺すな、姦淫するな、盗むな、偽証するな、
19:父母を敬え、また、隣人を自分のように愛しなさい。』」
20:そこで、この青年は言った。「そういうことはみな守ってきました。まだ何か欠けているでしょうか。」
21:イエスは言われた。「もし完全になりたいのなら、行って持ち物を売り払い、貧しい人々に施しなさい。そうすれば、天に富を積むことになる。それから、わたしに従いなさい。」
22:青年はこの言葉を聞き、悲しみながら立ち去った。たくさんの財産を持っていたからである。
23:イエスは弟子たちに言われた。「はっきり言っておく。金持ちが天の国に入るのは難しい。
24:重ねて言うが、金持ちが神の国に入るよりも、らくだが針の穴を通る方がまだ易しい。」
25:弟子たちはこれを聞いて非常に驚き、「それでは、だれが救われるのだろうか」と言った。
26:イエスは彼らを見つめて、「それは人間にできることではないが、神は何でもできる」と言われた。
27:すると、ペトロがイエスに言った。「このとおり、わたしたちは何もかも捨ててあなたに従って参りました。では、わたしたちは何をいただけるのでしょうか。」
28:イエスは一同に言われた。「はっきり言っておく。新しい世界になり、人の子が栄光の座に座るとき、あなたがたも、わたしに従って来たのだから、十二の座に座ってイスラエルの十二部族を治めることになる。
29:わたしの名のために、家、兄弟、姉妹、父、母、子供、畑を捨てた者は皆、その百倍もの報いを受け、永遠の命を受け継ぐ。
30:しかし、先にいる多くの者が後になり、後にいる多くの者が先になる。」

                                         ▲戻る 


マタイによる福音書 20章
 

◆「ぶどう園の労働者」のたとえ

1:「天の国は次のようにたとえられる。ある家の主人が、ぶどう園で働く労働者を雇うために、夜明けに出かけて行った。
2:主人は、一日につき一デナリオンの約束で、労働者をぶどう園に送った。
3:また、九時ごろ行ってみると、何もしないで広場に立っている人々がいたので、
4:『あなたたちもぶどう園に行きなさい。ふさわしい賃金を払ってやろう』と言った。
5:それで、その人たちは出かけて行った。主人は、十二時ごろと三時ごろにまた出て行き、同じようにした。
6:五時ごろにも行ってみると、ほかの人々が立っていたので、『なぜ、何もしないで一日中ここに立っているのか』と尋ねると、
7:彼らは、『だれも雇ってくれないのです』と言った。主人は彼らに、『あなたたちもぶどう園に行きなさい』と言った。
8:夕方になって、ぶどう園の主人は監督に、『労働者たちを呼んで、最後に来た者から始めて、最初に来た者まで順に賃金を払ってやりなさい』と言った。
9:そこで、五時ごろに雇われた人たちが来て、一デナリオンずつ受け取った。
10:最初に雇われた人たちが来て、もっと多くもらえるだろうと思っていた。しかし、彼らも一デナリオンずつであった。
11:それで、受け取ると、主人に不平を言った。
12:『最後に来たこの連中は、一時間しか働きませんでした。まる一日、暑い中を辛抱して働いたわたしたちと、この連中とを同じ扱いにするとは。』
13:主人はその一人に答えた。『友よ、あなたに不当なことはしていない。あなたはわたしと一デナリオンの約束をしたではないか。
14:自分の分を受け取って帰りなさい。わたしはこの最後の者にも、あなたと同じように支払ってやりたいのだ。
15:自分のものを自分のしたいようにしては、いけないか。それとも、わたしの気前のよさをねたむのか。』
16:このように、後にいる者が先になり、先にいる者が後になる。」
 
◆イエス、三度死と復活を予告する
17:イエスはエルサレムへ上って行く途中、十二人の弟子だけを呼び寄せて言われた。
18:「今、わたしたちはエルサレムへ上って行く。人の子は、祭司長たちや律法学者たちに引き渡される。彼らは死刑を宣告して、
19:異邦人に引き渡す。人の子を侮辱し、鞭打ち、十字架につけるためである。そして、人の子は三日目に復活する。」
 
◆ヤコブとヨハネの母の願い
20:そのとき、ゼベダイの息子たちの母が、その二人の息子と一緒にイエスのところに来て、ひれ伏し、何かを願おうとした。
21:イエスが、「何が望みか」と言われると、彼女は言った。「王座にお着きになるとき、この二人の息子が、一人はあなたの右に、もう一人は左に座れるとおっしゃってください。」
22:イエスはお答えになった。「あなたがたは、自分が何を願っているか、分かっていない。このわたしが飲もうとしている杯を飲むことができるか。」二人が、「できます」と言うと、
23:イエスは言われた。「確かに、あなたがたはわたしの杯を飲むことになる。しかし、わたしの右と左にだれが座るかは、わたしの決めることではない。それは、わたしの父によって定められた人々に許されるのだ。」
24:ほかの十人の者はこれを聞いて、この二人の兄弟のことで腹を立てた。
25:そこで、イエスは一同を呼び寄せて言われた。「あなたがたも知っているように、異邦人の間では支配者たちが民を支配し、偉い人たちが権力を振るっている。
26:しかし、あなたがたの間では、そうであってはならない。あなたがたの中で偉くなりたい者は、皆に仕える者になり、
27:いちばん上になりたい者は、皆の僕になりなさい。
28:人の子が、仕えられるためではなく仕えるために、また、多くの人の身代金として自分の命を献げるために来たのと同じように。」
 
◆二人の盲人をいやす
29:一行がエリコの町を出ると、大勢の群衆がイエスに従った。
30:そのとき、二人の盲人が道端に座っていたが、イエスがお通りと聞いて、「主よ、ダビデの子よ、わたしたちを憐れんでください」と叫んだ。
31:群衆は叱りつけて黙らせようとしたが、二人はますます、「主よ、ダビデの子よ、わたしたちを憐れんでください」と叫んだ。
32:イエスは立ち止まり、二人を呼んで、「何をしてほしいのか」と言われた。
33:二人は、「主よ、目を開けていただきたいのです」と言った。
34:イエスが深く憐れんで、その目に触れられると、盲人たちはすぐ見えるようになり、イエスに従った。

                                         ▲戻る


マタイによる福音書 21章

◆エルサレムに迎えられる
1:一行がエルサレムに近づいて、オリーブ山沿いのベトファゲに来た とき、イエスは二人の弟子を使いに出そうとして、
2:言われた。「向こうの村へ行きなさい。するとすぐ、ろばがつない であり、一緒に子ろばのいるのが見つかる。それをほどいて、わた しのところに引いて来なさい。
3:もし、だれかが何か言ったら、『主がお入り用なのです』と言いな さい。すぐ渡してくれる。」
4:それは、預言者を通して言われていたことが実現するためであった。
5:「シオンの娘に告げよ。『見よ、お前の王がお前のところにおいで になる、/柔和な方で、ろばに乗り、/荷を負うろばの子、子ろば に乗って。』」
6:弟子たちは行って、イエスが命じられたとおりにし、
7:ろばと子ろばを引いて来て、その上に服をかけると、イエスはそれ にお乗りになった。
8:大勢の群衆が自分の服を道に敷き、また、ほかの人々は木の枝を切 って道に敷いた。
9:そして群衆は、イエスの前を行く者も後に従う者も叫んだ。「ダビ デの子にホサナ。主の名によって来られる方に、祝福があるように。 いと高きところにホサナ。」
10:イエスがエルサレムに入られると、都中の者が、「いったい、これ はどういう人だ」と言って騒いだ。
11:そこで群衆は、「この方は、ガリラヤのナザレから出た預言者イエ スだ」と言った。
 
◆神殿から商人を追い出す
12:それから、イエスは神殿の境内に入り、そこで売り買いをしていた 人々を皆追い出し、両替人の台や鳩を売る者の腰掛けを倒された。
13:そして言われた。「こう書いてある。『わたしの家は、祈りの家と 呼ばれるべきである。』/ところが、あなたたちは/それを強盗の 巣にしている。」
14:境内では目の見えない人や足の不自由な人たちがそばに寄って来た ので、イエスはこれらの人々をいやされた。
15:他方、祭司長たちや、律法学者たちは、イエスがなさった不思議な 業を見、境内で子供たちまで叫んで、「ダビデの子にホサナ」と言 うのを聞いて腹を立て、
16:イエスに言った。「子供たちが何と言っているか、聞こえるか。」 イエスは言われた。「聞こえる。あなたたちこそ、『幼子や乳飲み 子の口に、あなたは賛美を歌わせた』という言葉をまだ読んだこと がないのか。」
17:それから、イエスは彼らと別れ、都を出てベタニアに行き、そこに お泊まりになった。
 
◆いちじくの木を呪う
18:朝早く、都に帰る途中、イエスは空腹を覚えられた。
19:道端にいちじくの木があるのを見て、近寄られたが、葉のほかは何 もなかった。そこで、「今から後いつまでも、お前には実がならな いように」と言われると、いちじくの木はたちまち枯れてしまった。
20:弟子たちはこれを見て驚き、「なぜ、たちまち枯れてしまったので すか」と言った。
21:イエスはお答えになった。「はっきり言っておく。あなたがたも信 仰を持ち、疑わないならば、いちじくの木に起こったようなことが できるばかりでなく、この山に向かい、『立ち上がって、海に飛び 込め』と言っても、そのとおりになる。
22:信じて祈るならば、求めるものは何でも得られる。」
 
◆権威についての問答
23:イエスが神殿の境内に入って教えておられると、祭司長や民の長老 たちが近寄って来て言った。「何の権威でこのようなことをしてい るのか。だれがその権威を与えたのか。」
24:イエスはお答えになった。「では、わたしも一つ尋ねる。それに答 えるなら、わたしも、何の権威でこのようなことをするのか、あな たたちに言おう。
25:ヨハネの洗礼はどこからのものだったか。天からのものか、それと も、人からのものか。」彼らは論じ合った。「『天からのものだ』 と言えば、『では、なぜヨハネを信じなかったのか』と我々に言う だろう。
26:『人からのものだ』と言えば、群衆が怖い。皆がヨハネを預言者と 思っているから。」
27:そこで、彼らはイエスに、「分からない」と答えた。すると、イエ スも言われた。「それなら、何の権威でこのようなことをするのか、 わたしも言うまい。」
 
◆「二人の息子」のたとえ
28:「ところで、あなたたちはどう思うか。ある人に息子が二人いたが、 彼は兄のところへ行き、『子よ、今日、ぶどう園へ行って働きなさ い』と言った。
29:兄は『いやです』と答えたが、後で考え直して出かけた。
30:弟のところへも行って、同じことを言うと、弟は『お父さん、承知 しました』と答えたが、出かけなかった。
31:この二人のうち、どちらが父親の望みどおりにしたか。」彼らが 「兄の方です」と言うと、イエスは言われた。「はっきり言ってお く。徴税人や娼婦たちの方が、あなたたちより先に神の国に入るだ ろう。
32:なぜなら、ヨハネが来て義の道を示したのに、あなたたちは彼を信 ぜず、徴税人や娼婦たちは信じたからだ。あなたたちはそれを見て も、後で考え直して彼を信じようとしなかった。」
 
◆「ぶどう園と農夫」のたとえ
33:「もう一つのたとえを聞きなさい。ある家の主人がぶどう園を作り、 垣を巡らし、その中に搾り場を掘り、見張りのやぐらを立て、これ を農夫たちに貸して旅に出た。
34:さて、収穫の時が近づいたとき、収穫を受け取るために、僕たちを 農夫たちのところへ送った。
35:だが、農夫たちはこの僕たちを捕まえ、一人を袋だたきにし、一人 を殺し、一人を石で打ち殺した。
36:また、他の僕たちを前よりも多く送ったが、農夫たちは同じ目に遭 わせた。
37:そこで最後に、『わたしの息子なら敬ってくれるだろう』と言って、 主人は自分の息子を送った。
38:農夫たちは、その息子を見て話し合った。『これは跡取りだ。さあ、 殺して、彼の相続財産を我々のものにしよう。』
39:そして、息子を捕まえ、ぶどう園の外にほうり出して殺してしまっ た。
40:さて、ぶどう園の主人が帰って来たら、この農夫たちをどうするだ ろうか。」
41:彼らは言った。「その悪人どもをひどい目に遭わせて殺し、ぶどう 園は、季節ごとに収穫を納めるほかの農夫たちに貸すにちがいない。」
42:イエスは言われた。「聖書にこう書いてあるのを、まだ読んだこと がないのか。『家を建てる者の捨てた石、/これが隅の親石となっ た。これは、主がなさったことで、/わたしたちの目には不思議に 見える。』
43:だから、言っておくが、神の国はあなたたちから取り上げられ、そ れにふさわしい実を結ぶ民族に与えられる。
44:この石の上に落ちる者は打ち砕かれ、この石がだれかの上に落ちれ ば、その人は押しつぶされてしまう。」
45:祭司長たちやファリサイ派の人々はこのたとえを聞いて、イエスが 自分たちのことを言っておられると気づき、
46:イエスを捕らえようとしたが、群衆を恐れた。群衆はイエスを預言 者だと思っていたからである。

                                         ▲戻る


マタイによる福音書 22章
 

◆「婚宴」のたとえ

1:イエスは、また、たとえを用いて語られた。
2:「天の国は、ある王が王子のために婚宴を催したのに似ている。
3:王は家来たちを送り、婚宴に招いておいた人々を呼ばせたが、来ようとしなかった。
4:そこでまた、次のように言って、別の家来たちを使いに出した。『招いておいた人々にこう言いなさい。「食事の用意が整いました。牛や肥えた家畜を屠って、すっかり用意ができています。さあ、婚宴においでください。」』
5:しかし、人々はそれを無視し、一人は畑に、一人は商売に出かけ、
6:また、他の人々は王の家来たちを捕まえて乱暴し、殺してしまった。
7:そこで、王は怒り、軍隊を送って、この人殺しどもを滅ぼし、その町を焼き払った。
8:そして、家来たちに言った。『婚宴の用意はできているが、招いておいた人々は、ふさわしくなかった。
9:だから、町の大通りに出て、見かけた者はだれでも婚宴に連れて来なさい。』
10:そこで、家来たちは通りに出て行き、見かけた人は善人も悪人も皆集めて来たので、婚宴は客でいっぱいになった。
11:王が客を見ようと入って来ると、婚礼の礼服を着ていない者が一人いた。
12:王は、『友よ、どうして礼服を着ないでここに入って来たのか』と言った。この者が黙っていると、
13:王は側近の者たちに言った。『この男の手足を縛って、外の暗闇にほうり出せ。そこで泣きわめいて歯ぎしりするだろう。』
14:招かれる人は多いが、選ばれる人は少ない。」
 
◆皇帝への税金
15:それから、ファリサイ派の人々は出て行って、どのようにしてイエスの言葉じりをとらえて、罠にかけようかと相談した。
16:そして、その弟子たちをヘロデ派の人々と一緒にイエスのところに遣わして尋ねさせた。「先生、わたしたちは、あなたが真実な方で、真理に基づいて神の道を教え、だれをもはばからない方であることを知っています。人々を分け隔てなさらないからです。
17:ところで、どうお思いでしょうか、お教えください。皇帝に税金を納めるのは、律法に適っているでしょうか、適っていないでしょうか。」
18:イエスは彼らの悪意に気づいて言われた。「偽善者たち、なぜ、わたしを試そうとするのか。
19:税金に納めるお金を見せなさい。」彼らがデナリオン銀貨を持って来ると、
20:イエスは、「これは、だれの肖像と銘か」と言われた。
21:彼らは、「皇帝のものです」と言った。すると、イエスは言われた。「では、皇帝のものは皇帝に、神のものは神に返しなさい。」
22:彼らはこれを聞いて驚き、イエスをその場に残して立ち去った。
 
◆復活についての問答
23:その同じ日、復活はないと言っているサドカイ派の人々が、イエスに近寄って来て尋ねた。
24:「先生、モーセは言っています。『ある人が子がなくて死んだ場合、その弟は兄嫁と結婚して、兄の跡継ぎをもうけねばならない』と。
25:さて、わたしたちのところに、七人の兄弟がいました。長男は妻を迎えましたが死に、跡継ぎがなかったので、その妻を弟に残しました。
26:次男も三男も、ついに七人とも同じようになりました。
27:最後にその女も死にました。
28:すると復活の時、その女は七人のうちのだれの妻になるのでしょうか。皆その女を妻にしたのです。」
29:イエスはお答えになった。「あなたたちは聖書も神の力も知らないから、思い違いをしている。
30:復活の時には、めとることも嫁ぐこともなく、天使のようになるのだ。
31:死者の復活については、神があなたたちに言われた言葉を読んだことがないのか。
32:『わたしはアブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神である』とあるではないか。神は死んだ者の神ではなく、生きている者の神なのだ。」
33:群衆はこれを聞いて、イエスの教えに驚いた。
 
◆最も重要な掟
34:ファリサイ派の人々は、イエスがサドカイ派の人々を言い込められたと聞いて、一緒に集まった。
35:そのうちの一人、律法の専門家が、イエスを試そうとして尋ねた。
36:「先生、律法の中で、どの掟が最も重要でしょうか。」
37:イエスは言われた。「『心を尽くし、精神を尽くし、思いを尽くして、あなたの神である主を愛しなさい。』
38:これが最も重要な第一の掟である。
39:第二も、これと同じように重要である。『隣人を自分のように愛しなさい。』
40:律法全体と預言者は、この二つの掟に基づいている。」
 
◆ダビデの子についての問答
41:ファリサイ派の人々が集まっていたとき、イエスはお尋ねになった。
42:「あなたたちはメシアのことをどう思うか。だれの子だろうか。」彼らが、「ダビデの子です」と言うと、
43:イエスは言われた。「では、どうしてダビデは、霊を受けて、メシアを主と呼んでいるのだろうか。
44:『主は、わたしの主にお告げになった。「わたしの右の座に着きなさい、/わたしがあなたの敵を/あなたの足もとに屈服させるときまで」と。』
45:このようにダビデがメシアを主と呼んでいるのであれば、どうしてメシアがダビデの子なのか。」
46:これにはだれ一人、ひと言も言い返すことができず、その日からは、もはやあえて質問する者はなかった。

                                         ▲戻る


マタイによる福音書 23章
 

◆律法学者とファリサイ派の人々を非難する

1:それから、イエスは群衆と弟子たちにお話しになった。
2:「律法学者たちやファリサイ派の人々は、モーセの座に着いている。
3:だから、彼らが言うことは、すべて行い、また守りなさい。しかし、彼らの行いは、見倣ってはならない。言うだけで、実行しないからである。
4:彼らは背負いきれない重荷をまとめ、人の肩に載せるが、自分ではそれを動かすために、指一本貸そうともしない。
5:そのすることは、すべて人に見せるためである。聖句の入った小箱を大きくしたり、衣服の房を長くしたりする。
6:宴会では上座、会堂では上席に座ることを好み、
7:また、広場で挨拶されたり、『先生』と呼ばれたりすることを好む。
8:だが、あなたがたは『先生』と呼ばれてはならない。あなたがたの師は一人だけで、あとは皆兄弟なのだ。
9:また、地上の者を『父』と呼んではならない。あなたがたの父は天の父おひとりだけだ。
10:『教師』と呼ばれてもいけない。あなたがたの教師はキリスト一人だけである。
11:あなたがたのうちでいちばん偉い人は、仕える者になりなさい。
12:だれでも高ぶる者は低くされ、へりくだる者は高められる。
 
13:律法学者たちとファリサイ派の人々、あなたたち偽善者は不幸だ。人々の前で天の国を閉ざすからだ。自分が入らないばかりか、入ろうとする人をも入らせない。
14:律法学者とファリサイ派の人々、あなたたち偽善者は不幸だ。やもめの家を食い物にし、見せかけの長い祈りをする。だからあなたたちは、人一倍厳しい裁きを受けることになる。
15:律法学者たちとファリサイ派の人々、あなたたち偽善者は不幸だ。改宗者を一人つくろうとして、海と陸を巡り歩くが、改宗者ができると、自分より倍も悪い地獄の子にしてしまうからだ。
16:ものの見えない案内人、あなたたちは不幸だ。あなたたちは、『神殿にかけて誓えば、その誓いは無効である。だが、神殿の黄金にかけて誓えば、それは果たさねばならない』と言う。
17:愚かで、ものの見えない者たち、黄金と、黄金を清める神殿と、どちらが尊いか。
18:また、『祭壇にかけて誓えば、その誓いは無効である。その上の供え物にかけて誓えば、それは果たさねばならない』と言う。
19:ものの見えない者たち、供え物と、供え物を清くする祭壇と、どちらが尊いか。
20:祭壇にかけて誓う者は、祭壇とその上のすべてのものにかけて誓うのだ。
21:神殿にかけて誓う者は、神殿とその中に住んでおられる方にかけて誓うのだ。
22:天にかけて誓う者は、神の玉座とそれに座っておられる方にかけて誓うのだ。
23:律法学者たちとファリサイ派の人々、あなたたち偽善者は不幸だ。薄荷、いのんど、茴香の十分の一は献げるが、律法の中で最も重要な正義、慈悲、誠実はないがしろにしているからだ。これこそ行うべきことである。もとより、十分の一の献げ物もないがしろにしてはならないが。
24:ものの見えない案内人、あなたたちはぶよ一匹さえも漉して除くが、らくだは飲み込んでいる。
25:律法学者たちとファリサイ派の人々、あなたたち偽善者は不幸だ。杯や皿の外側はきれいにするが、内側は強欲と放縦で満ちているからだ。
26:ものの見えないファリサイ派の人々、まず、杯の内側をきれいにせよ。そうすれば、外側もきれいになる。
27:律法学者たちとファリサイ派の人々、あなたたち偽善者は不幸だ。白く塗った墓に似ているからだ。外側は美しく見えるが、内側は死者の骨やあらゆる汚れで満ちている。
28:このようにあなたたちも、外側は人に正しいように見えながら、内側は偽善と不法で満ちている。
29:律法学者たちとファリサイ派の人々、あなたたち偽善者は不幸だ。預言者の墓を建てたり、正しい人の記念碑を飾ったりしているからだ。
30:そして、『もし先祖の時代に生きていても、預言者の血を流す側にはつかなかったであろう』などと言う。
31:こうして、自分が預言者を殺した者たちの子孫であることを、自ら証明している。
32:先祖が始めた悪事の仕上げをしたらどうだ。
33:蛇よ、蝮の子らよ、どうしてあなたたちは地獄の罰を免れることができようか。
34:だから、わたしは預言者、知者、学者をあなたたちに遣わすが、あなたたちはその中のある者を殺し、十字架につけ、ある者を会堂で鞭打ち、町から町へと追い回して迫害する。
35:こうして、正しい人アベルの血から、あなたたちが聖所と祭壇の間で殺したバラキアの子ゼカルヤの血に至るまで、地上に流された正しい人の血はすべて、あなたたちにふりかかってくる。
36:はっきり言っておく。これらのことの結果はすべて、今の時代の者たちにふりかかってくる。」
 
◆エルサレムのために嘆く
 
37:「エルサレム、エルサレム、預言者たちを殺し、自分に遣わされた人々を石で打ち殺す者よ、めん鳥が雛を羽の下に集めるように、わたしはお前の子らを何度集めようとしたことか。だが、お前たちは応じようとしなかった。
38:見よ、お前たちの家は見捨てられて荒れ果てる。
39:言っておくが、お前たちは、『主の名によって来られる方に、祝福があるように』と言うときまで、今から後、決してわたしを見ることがない。」

                                        ▲戻る


マタイによる福音書 24章
 

◆神殿の崩壊を予告する

1:イエスが神殿の境内を出て行かれると、弟子たちが近寄って来て、
イエスに神殿の建物を指さした。
2:そこで、イエスは言われた。「これらすべての物を見ないのか。はっきり言っておく。一つの石もここで崩されずに他の石の上に残ることはない。」
 

◆終末の徴

3:イエスがオリーブ山で座っておられると、弟子たちがやって来て、ひそかに言った。「おっしゃってください。そのことはいつ起こるのですか。また、あなたが来られて世の終わるときには、どんな徴があるのですか。」
4:イエスはお答えになった。「人に惑わされないように気をつけなさい。
5:わたしの名を名乗る者が大勢現れ、『わたしがメシアだ』と言って、多くの人を惑わすだろう。
6:戦争の騒ぎや戦争のうわさを聞くだろうが、慌てないように気をつけなさい。そういうことは起こるに決まっているが、まだ世の終わりではない。
7:民は民に、国は国に敵対して立ち上がり、方々に飢饉や地震が起こる。
8:しかし、これらはすべて産みの苦しみの始まりである。
9:そのとき、あなたがたは苦しみを受け、殺される。また、わたしの名のために、あなたがたはあらゆる民に憎まれる。
10:そのとき、多くの人がつまずき、互いに裏切り、憎み合うようになる。
11:偽預言者も大勢現れ、多くの人を惑わす。
12:不法がはびこるので、多くの人の愛が冷える。
13:しかし、最後まで耐え忍ぶ者は救われる。
14:そして、御国のこの福音はあらゆる民への証しとして、全世界に宣べ伝えられる。それから、終わりが来る。」
 

◆大きな苦難を予告する

15:「預言者ダニエルの言った憎むべき破壊者が、聖なる場所に立つのを見たら――読者は悟れ――、
16:そのとき、ユダヤにいる人々は山に逃げなさい。
17:屋上にいる者は、家にある物を取り出そうとして下に降りてはならない。
18:畑にいる者は、上着を取りに帰ってはならない。
19:それらの日には、身重の女と乳飲み子を持つ女は不幸だ。
20:逃げるのが冬や安息日にならないように、祈りなさい。
21:そのときには、世界の初めから今までなく、今後も決してないほどの大きな苦難が来るからである。
22:神がその期間を縮めてくださらなければ、だれ一人救われない。しかし、神は選ばれた人たちのために、その期間を縮めてくださるであろう。
23:そのとき、『見よ、ここにメシアがいる』『いや、ここだ』と言う者がいても、信じてはならない。
24:偽メシアや偽預言者が現れて、大きなしるしや不思議な業を行い、できれば、選ばれた人たちをも惑わそうとするからである。
25:あなたがたには前もって言っておく。
26:だから、人が『見よ、メシアは荒れ野にいる』と言っても、行ってはならない。また、『見よ、奥の部屋にいる』と言っても、信じてはならない。
27:稲妻が東から西へひらめき渡るように、人の子も来るからである。
28:死体のある所には、はげ鷹が集まるものだ。」
 

◆人の子が来る

29:「その苦難の日々の後、たちまち/太陽は暗くなり、/月は光を放たず、/星は空から落ち、/天体は揺り動かされる。
30:そのとき、人の子の徴が天に現れる。そして、そのとき、地上のすべての民族は悲しみ、人の子が大いなる力と栄光を帯びて天の雲に乗って来るのを見る。
31:人の子は、大きなラッパの音を合図にその天使たちを遣わす。天使たちは、天の果てから果てまで、彼によって選ばれた人たちを四方から呼び集める。」
 

◆いちじくの木の教え

32:「いちじくの木から教えを学びなさい。枝が柔らかくなり、葉が伸びると、夏の近づいたことが分かる。
33:それと同じように、あなたがたは、これらすべてのことを見たなら、人の子が戸口に近づいていると悟りなさい。
34:はっきり言っておく。これらのことがみな起こるまでは、この時代は決して滅びない。
35:天地は滅びるが、わたしの言葉は決して滅びない。」
 

◆目を覚ましていなさい

36:「その日、その時は、だれも知らない。天使たちも子も知らない。ただ、父だけがご存じである。
37:人の子が来るのは、ノアの時と同じだからである。
38:洪水になる前は、ノアが箱舟に入るその日まで、人々は食べたり飲んだり、めとったり嫁いだりしていた。
39:そして、洪水が襲って来て一人残らずさらうまで、何も気がつかなかった。人の子が来る場合も、このようである。
40:そのとき、畑に二人の男がいれば、一人は連れて行かれ、もう一人は残される。
41:二人の女が臼をひいていれば、一人は連れて行かれ、もう一人は残される。
42:だから、目を覚ましていなさい。いつの日、自分の主が帰って来られるのか、あなたがたには分からないからである。
43:このことをわきまえていなさい。家の主人は、泥棒が夜のいつごろやって来るかを知っていたら、目を覚ましていて、みすみす自分の家に押し入らせはしないだろう。
44:だから、あなたがたも用意していなさい。人の子は思いがけない時に来るからである。」
 

◆忠実な僕と悪い僕

45:「主人がその家の使用人たちの上に立てて、時間どおり彼らに食事を与えさせることにした忠実で賢い僕は、いったいだれであろうか。
46:主人が帰って来たとき、言われたとおりにしているのを見られる僕は幸いである。
47:はっきり言っておくが、主人は彼に全財産を管理させるにちがいない。
48:しかし、それが悪い僕で、主人は遅いと思い、
49:仲間を殴り始め、酒飲みどもと一緒に食べたり飲んだりしているとする。
50:もしそうなら、その僕の主人は予想しない日、思いがけない時に帰って来て、
51:彼を厳しく罰し、偽善者たちと同じ目に遭わせる。そこで泣きわめいて歯ぎしりするだろう。」

                                        ▲戻る


マタイによる福音書 25章

◆「十人のおとめ」のたとえ
1:「そこで、天の国は次のようにたとえられる。十人のおとめがそれぞれともし火を持って、花婿を迎えに出て行く。
2:そのうちの五人は愚かで、五人は賢かった。
3:愚かなおとめたちは、ともし火は持っていたが、油の用意をしていなかった。
4:賢いおとめたちは、それぞれのともし火と一緒に、壺に油を入れて持っていた。
5:ところが、花婿の来るのが遅れたので、皆眠気がさして眠り込んでしまった。
6:真夜中に『花婿だ。迎えに出なさい』と叫ぶ声がした。
7:そこで、おとめたちは皆起きて、それぞれのともし火を整えた。
8:愚かなおとめたちは、賢いおとめたちに言った。『油を分けてください。わたしたちのともし火は消えそうです。』
9:賢いおとめたちは答えた。『分けてあげるほどはありません。それより、店に行って、自分の分を買って来なさい。』
10:愚かなおとめたちが買いに行っている間に、花婿が到着して、用意のできている五人は、花婿と一緒に婚宴の席に入り、戸が閉められた。
11:その後で、ほかのおとめたちも来て、『御主人様、御主人様、開けてください』と言った。
12:しかし主人は、『はっきり言っておく。わたしはお前たちを知らない』と答えた。
13:だから、目を覚ましていなさい。あなたがたは、その日、その時を知らないのだから。」
 
◆「タラントン」のたとえ
14:「天の国はまた次のようにたとえられる。ある人が旅行に出かけるとき、僕たちを呼んで、自分の財産を預けた。
15:それぞれの力に応じて、一人には五タラントン、一人には二タラントン、もう一人には一タラントンを預けて旅に出かけた。早速、
16:五タラントン預かった者は出て行き、それで商売をして、ほかに五タラントンをもうけた。
17:同じように、二タラントン預かった者も、ほかに二タラントンをもうけた。
18:しかし、一タラントン預かった者は、出て行って穴を掘り、主人の金を隠しておいた。
19:さて、かなり日がたってから、僕たちの主人が帰って来て、彼らと清算を始めた。
20:まず、五タラントン預かった者が進み出て、ほかの五タラントンを差し出して言った。『御主人様、五タラントンお預けになりましたが、御覧ください。ほかに五タラントンもうけました。』
21:主人は言った。『忠実な良い僕だ。よくやった。お前は少しのものに忠実であったから、多くのものを管理させよう。主人と一緒に喜んでくれ。』
22:次に、二タラントン預かった者も進み出て言った。『御主人様、二タラントンお預けになりましたが、御覧ください。ほかに二タラントンもうけました。』
23:主人は言った。『忠実な良い僕だ。よくやった。お前は少しのものに忠実であったから、多くのものを管理させよう。主人と一緒に喜んでくれ。』
24:ところで、一タラントン預かった者も進み出て言った。『御主人様、あなたは蒔かない所から刈り取り、散らさない所からかき集められる厳しい方だと知っていましたので、
25:恐ろしくなり、出かけて行って、あなたのタラントンを地の中に隠して/おきました。御覧ください。これがあなたのお金です。』
26:主人は答えた。『怠け者の悪い僕だ。わたしが蒔かない所から刈り取り、散らさない所からかき集めることを知っていたのか。
27:それなら、わたしの金を銀行に入れておくべきであった。そうしておけば、帰って来たとき、利息付きで返してもらえたのに。
28:さあ、そのタラントンをこの男から取り上げて、十タラントン持っている者に与えよ。
29:だれでも持っている人は更に与えられて豊かになるが、持っていない人は持っているものまでも取り上げられる。
30:この役に立たない僕を外の暗闇に追い出せ。そこで泣きわめいて歯ぎしりするだろう。』」
 
◆すべての民族を裁く
31:「人の子は、栄光に輝いて天使たちを皆従えて来るとき、その栄光の座に着く。
32:そして、すべての国の民がその前に集められると、羊飼いが羊と山羊を分けるように、彼らをより分け、
33:羊を右に、山羊を左に置く。
34:そこで、王は右側にいる人たちに言う。『さあ、わたしの父に祝福された人たち、天地創造の時からお前たちのために用意されている国を受け継ぎなさい。
35:お前たちは、わたしが飢えていたときに食べさせ、のどが渇いていたときに飲ませ、旅をしていたときに宿を貸し、
36:裸のときに着せ、病気のときに見舞い、牢にいたときに訪ねてくれたからだ。』
37:すると、正しい人たちが王に答える。『主よ、いつわたしたちは、飢えておられるのを見て食べ物を差し上げ、のどが渇いておられるのを見て飲み物を差し上げたでしょうか。
38:いつ、旅をしておられるのを見てお宿を貸し、裸でおられるのを見てお着せしたでしょうか。
39:いつ、病気をなさったり、牢におられたりするのを見て、お訪ねしたでしょうか。』
40:そこで、王は答える。『はっきり言っておく。わたしの兄弟であるこの最も小さい者の一人にしたのは、わたしにしてくれたことなのである。』
41:それから、王は左側にいる人たちにも言う。『呪われた者ども、わたしから離れ去り、悪魔とその手下のために用意してある永遠の火に入れ。
42:お前たちは、わたしが飢えていたときに食べさせず、のどが渇いたときに飲ませず、
43:旅をしていたときに宿を貸さず、裸のときに着せず、病気のとき、牢にいたときに、訪ねてくれなかったからだ。』
44:すると、彼らも答える。『主よ、いつわたしたちは、あなたが飢えたり、渇いたり、旅をしたり、裸であったり、病気であったり、牢におられたりするのを見て、お世話をしなかったでしょうか。』
45:そこで、王は答える。『はっきり言っておく。この最も小さい者の一人にしなかったのは、わたしにしてくれなかったことなのである。』
46:こうして、この者どもは永遠の罰を受け、正しい人たちは永遠の命にあずかるのである。」

                                         ▲戻る


マタイによる福音書 26章

 ◆イエスを殺す計略

1:イエスはこれらの言葉をすべて語り終えると、弟子たちに言われた。
2:「あなたがたも知っているとおり、二日後は過越祭である。人の子は、十字架につけられるために引き渡される。」
3:そのころ、祭司長たちや民の長老たちは、カイアファという大祭司の屋敷に集まり、
4:計略を用いてイエスを捕らえ、殺そうと相談した。
5:しかし彼らは、「民衆の中に騒ぎが起こるといけないから、祭りの間はやめておこう」と言っていた。
 
◆ベタニアで香油を注がれる
6:さて、イエスがベタニアで重い皮膚病の人シモンの家におられたとき、
7:一人の女が、極めて高価な香油の入った石膏の壺を持って近寄り、食事の席に着いておられるイエスの頭に香油を注ぎかけた。
8:弟子たちはこれを見て、憤慨して言った。「なぜ、こんな無駄使いをするのか。
9:高く売って、貧しい人々に施すことができたのに。」
10:イエスはこれを知って言われた。「なぜ、この人を困らせるのか。わたしに良いことをしてくれたのだ。
11:貧しい人々はいつもあなたがたと一緒にいるが、わたしはいつも一緒にいるわけではない。
12:この人はわたしの体に香油を注いで、わたしを葬る準備をしてくれた。
13:はっきり言っておく。世界中どこでも、この福音が宣べ伝えられる所では、この人のしたことも記念として語り伝えられるだろう。」
 
◆ユダ、裏切りを企てる
14:そのとき、十二人の一人で、イスカリオテのユダという者が、祭司長たちのところへ行き、
15:「あの男をあなたたちに引き渡せば、幾らくれますか」と言った。そこで、彼らは銀貨三十枚を支払うことにした。
16:そのときから、ユダはイエスを引き渡そうと、良い機会をねらっていた。
 
◆過越の食事をする
17:除酵祭の第一日に、弟子たちがイエスのところに来て、「どこに、過越の食事をなさる用意をいたしましょうか」と言った。
18:イエスは言われた。「都のあの人のところに行ってこう言いなさい。『先生が、「わたしの時が近づいた。お宅で弟子たちと一緒に過越の食事をする」と言っています。』」
19:弟子たちは、イエスに命じられたとおりにして、過越の食事を準備した。
20:夕方になると、イエスは十二人と一緒に食事の席に着かれた。
21:一同が食事をしているとき、イエスは言われた。「はっきり言っておくが、あなたがたのうちの一人がわたしを裏切ろうとしている。」
22:弟子たちは非常に心を痛めて、「主よ、まさかわたしのことでは」と代わる代わる言い始めた。
23:イエスはお答えになった。「わたしと一緒に手で鉢に食べ物を浸した者が、わたしを裏切る。
24:人の子は、聖書に書いてあるとおりに、去って行く。だが、人の子を裏切るその者は不幸だ。生まれなかった方が、その者のためによかった。」
25:イエスを裏切ろうとしていたユダが口をはさんで、「先生、まさか
わたしのことでは」と言うと、イエスは言われた。「それはあなたの言ったことだ。」
 
◆主の晩餐
26:一同が食事をしているとき、イエスはパンを取り、賛美の祈りを唱えて、それを裂き、弟子たちに与えながら言われた。「取って食べなさい。これはわたしの体である。」
27:また、杯を取り、感謝の祈りを唱え、彼らに渡して言われた。「皆、この杯から飲みなさい。
28:これは、罪が赦されるように、多くの人のために流されるわたしの血、契約の血である。
29:言っておくが、わたしの父の国であなたがたと共に新たに飲むその日まで、今後ぶどうの実から作ったものを飲むことは決してあるまい。」
30:一同は賛美の歌をうたってから、オリーブ山へ出かけた。
 
◆ペトロの離反を予告する
31:そのとき、イエスは弟子たちに言われた。「今夜、あなたがたは皆わたしにつまずく。『わたしは羊飼いを打つ。すると、羊の群れは散ってしまう』/と書いてあるからだ。
32:しかし、わたしは復活した後、あなたがたより先にガリラヤへ行く。」
33:するとペトロが、「たとえ、みんながあなたにつまずいても、わたしは決してつまずきません」と言った。
34:イエスは言われた。「はっきり言っておく。あなたは今夜、鶏が鳴く前に、三度わたしのことを知らないと言うだろう。」
35:ペトロは、「たとえ、御一緒に死なねばならなくなっても、あなたのことを知らないなどとは決して申しません」と言った。弟子たちも皆、同じように言った。
 
◆ゲツセマネで祈る
36:それから、イエスは弟子たちと一緒にゲツセマネという所に来て、「わたしが向こうへ行って祈っている間、ここに座っていなさい」と言われた。
37:ペトロおよびゼベダイの子二人を伴われたが、そのとき、悲しみもだえ始められた。
38:そして、彼らに言われた。「わたしは死ぬばかりに悲しい。ここを離れず、わたしと共に目を覚ましていなさい。」
39:少し進んで行って、うつ伏せになり、祈って言われた。「父よ、できることなら、この杯をわたしから過ぎ去らせてください。しかし、わたしの願いどおりではなく、御心のままに。」
40:それから、弟子たちのところへ戻って御覧になると、彼らは眠っていたので、ペトロに言われた。「あなたがたはこのように、わずか一時もわたしと共に目を覚ましていられなかったのか。
41:誘惑に陥らぬよう、目を覚まして祈っていなさい。心は燃えても、肉体は弱い。」
42:更に、二度目に向こうへ行って祈られた。「父よ、わたしが飲まないかぎりこの杯が過ぎ去らないのでしたら、あなたの御心が行われますように。」
43:再び戻って御覧になると、弟子たちは眠っていた。ひどく眠かったのである。
44:そこで、彼らを離れ、また向こうへ行って、三度目も同じ言葉で祈られた。
45:それから、弟子たちのところに戻って来て言われた。「あなたがたはまだ眠っている。休んでいる。時が近づいた。人の子は罪人たちの手に引き渡される。
46:立て、行こう。見よ、わたしを裏切る者が来た。」
 
◆裏切られ、逮捕される
47:イエスがまだ話しておられると、十二人の一人であるユダがやって来た。祭司長たちや民の長老たちの遣わした大勢の群衆も、剣や棒を持って一緒に来た。
48:イエスを裏切ろうとしていたユダは、「わたしが接吻するのが、その人だ。それを捕まえろ」と、前もって合図を決めていた。
49:ユダはすぐイエスに近寄り、「先生、こんばんは」と言って接吻した。
50:イエスは、「友よ、しようとしていることをするがよい」と言われた。すると人々は進み寄り、イエスに手をかけて捕らえた。
51:そのとき、イエスと一緒にいた者の一人が、手を伸ばして剣を抜き、大祭司の手下に打ちかかって、片方の耳を切り落とした。
52:そこで、イエスは言われた。「剣をさやに納めなさい。剣を取る者は皆、剣で滅びる。
53:わたしが父にお願いできないとでも思うのか。お願いすれば、父は十二軍団以上の天使を今すぐ送ってくださるであろう。
54:しかしそれでは、必ずこうなると書かれている聖書の言葉がどうして実現されよう。」
55:またそのとき、群衆に言われた。「まるで強盗にでも向かうように、剣や棒を持って捕らえに来たのか。わたしは毎日、神殿の境内に座って教えていたのに、あなたたちはわたしを捕らえなかった。
56:このすべてのことが起こったのは、預言者たちの書いたことが実現するためである。」このとき、弟子たちは皆、イエスを見捨てて逃げてしまった。
 
◆最高法院で裁判を受ける
57:人々はイエスを捕らえると、大祭司カイアファのところへ連れて行った。そこには、律法学者たちや長老たちが集まっていた。
58:ペトロは遠く離れてイエスに従い、大祭司の屋敷の中庭まで行き、事の成り行きを見ようと、中に入って、下役たちと一緒に座っていた。
59:さて、祭司長たちと最高法院の全員は、死刑にしようとしてイエスにとって不利な偽証を求めた。
60:偽証人は何人も現れたが、証拠は得られなかった。最後に二人の者が来て、
61:「この男は、『神の神殿を打ち倒し、三日あれば建てることができる』と言いました」と告げた。
62:そこで、大祭司は立ち上がり、イエスに言った。「何も答えないのか、この者たちがお前に不利な証言をしているが、どうなのか。」
63:イエスは黙り続けておられた。大祭司は言った。「生ける神に誓って我々に答えよ。お前は神の子、メシアなのか。」
64:イエスは言われた。「それは、あなたが言ったことです。しかし、わたしは言っておく。あなたたちはやがて、/人の子が全能の神の
右に座り、/天の雲に乗って来るのを見る。」
65:そこで、大祭司は服を引き裂きながら言った。「神を冒涜した。これでもまだ証人が必要だろうか。諸君は今、冒涜の言葉を聞いた。
66:どう思うか。」人々は、「死刑にすべきだ」と答えた。
67:そして、イエスの顔に唾を吐きかけ、こぶしで殴り、ある者は平手で打ちながら、
68:「メシア、お前を殴ったのはだれか。言い当ててみろ」と言った。
 
◆ペトロ、イエスを知らないと言う
69:ペトロは外にいて中庭に座っていた。そこへ一人の女中が近寄って来て、「あなたもガリラヤのイエスと一緒にいた」と言った。
70:ペトロは皆の前でそれを打ち消して、「何のことを言っているのか、わたしには分からない」と言った。
71:ペトロが門の方に行くと、ほかの女中が彼に目を留め、居合わせた人々に、「この人はナザレのイエスと一緒にいました」と言った。
72:そこで、ペトロは再び、「そんな人は知らない」と誓って打ち消した。
73:しばらくして、そこにいた人々が近寄って来てペトロに言った。「確かに、お前もあの連中の仲間だ。言葉遣いでそれが分かる。」
74:そのとき、ペトロは呪いの言葉さえ口にしながら、「そんな人は知らない」と誓い始めた。するとすぐ、鶏が鳴いた。
75:ペトロは、「鶏が鳴く前に、あなたは三度わたしを知らないと言うだろう」と言われたイエスの言葉を思い出した。そして外に出て、激しく泣いた。

                                        ▲戻る


マタイによる福音書 27章
 
◆ピラトに引き渡される
1:夜が明けると、祭司長たちと民の長老たち一同は、イエスを殺そうと相談した。
2:そして、イエスを縛って引いて行き、総督ピラトに渡した。
◆ユダ、自殺する
3:そのころ、イエスを裏切ったユダは、イエスに有罪の判決が下ったのを知って後悔し、銀貨三十枚を祭司長たちや長老たちに返そうとして、
4:「わたしは罪のない人の血を売り渡し、罪を犯しました」と言った。しかし彼らは、「我々の知ったことではない。お前の問題だ」と言った。
5:そこで、ユダは銀貨を神殿に投げ込んで立ち去り、首をつって死んだ。
6:祭司長たちは銀貨を拾い上げて、「これは血の代金だから、神殿の収入にするわけにはいかない」と言い、
7:相談のうえ、その金で「陶器職人の畑」を買い、外国人の墓地にすることにした。
8:このため、この畑は今日まで「血の畑」と言われている。
9:こうして、預言者エレミヤを通して言われていたことが実現した。「彼らは銀貨三十枚を取った。それは、値踏みされた者、すなわち、イスラエルの子らが値踏みした者の価である。
10:主がわたしにお命じになったように、彼らはこの金で陶器職人の畑を買い取った。」
 
◆ピラトから尋問される
11:さて、イエスは総督の前に立たれた。総督がイエスに、「お前がユダヤ人の王なのか」と尋問すると、イエスは、「それは、あなたが言っていることです」と言われた。
12:祭司長たちや長老たちから訴えられている間、これには何もお答えにならなかった。
13:するとピラトは、「あのようにお前に不利な証言をしているのに、聞こえないのか」と言った。
14:それでも、どんな訴えにもお答えにならなかったので、総督は非常に不思議に思った。
 
◆死刑の判決を受ける
15:ところで、祭りの度ごとに、総督は民衆の希望する囚人を一人釈放することにしていた。
16:そのころ、バラバ・イエスという評判の囚人がいた。
17:ピラトは、人々が集まって来たときに言った。「どちらを釈放してほしいのか。バラバ・イエスか。それともメシアといわれるイエスか。」
18:人々がイエスを引き渡したのは、ねたみのためだと分かっていたからである。
19:一方、ピラトが裁判の席に着いているときに、妻から伝言があった。「あの正しい人に関係しないでください。その人のことで、わたしは昨夜、夢で随分苦しめられました。」
20:しかし、祭司長たちや長老たちは、バラバを釈放して、イエスを死刑に処してもらうようにと群衆を説得した。
21:そこで、総督が、「二人のうち、どちらを釈放してほしいのか」と言うと、人々は、「バラバを」と言った。
22:ピラトが、「では、メシアといわれているイエスの方は、どうしたらよいか」と言うと、皆は、「十字架につけろ」と言った。
23:ピラトは、「いったいどんな悪事を働いたというのか」と言ったが、群衆はますます激しく、「十字架につけろ」と叫び続けた。
24:ピラトは、それ以上言っても無駄なばかりか、かえって騒動が起こりそうなのを見て、水を持って来させ、群衆の前で手を洗って言った。「この人の血について、わたしには責任がない。お前たちの問題だ。」
25:民はこぞって答えた。「その血の責任は、我々と子孫にある。」
26:そこで、ピラトはバラバを釈放し、イエスを鞭打ってから、十字架につけるために引き渡した。
 
◆兵士から侮辱される
27:それから、総督の兵士たちは、イエスを総督官邸に連れて行き、部隊の全員をイエスの周りに集めた。
28:そして、イエスの着ている物をはぎ取り、赤い外套を着せ、
29:茨で冠を編んで頭に載せ、また、右手に葦の棒を持たせて、その前にひざまずき、「ユダヤ人の王、万歳」と言って、侮辱した。
30:また、唾を吐きかけ、葦の棒を取り上げて頭をたたき続けた。
31:このようにイエスを侮辱したあげく、外套を脱がせて元の服を着せ、十字架につけるために引いて行った。
 
◆十字架につけられる
32:兵士たちは出て行くと、シモンという名前のキレネ人に出会ったので、イエスの十字架を無理に担がせた。
33:そして、ゴルゴタという所、すなわち「されこうべの場所」に着くと、
34:苦いものを混ぜたぶどう酒を飲ませようとしたが、イエスはなめただけで、飲もうとされなかった。
35:彼らはイエスを十字架につけると、くじを引いてその服を分け合い、
36:そこに座って見張りをしていた。
37:イエスの頭の上には、「これはユダヤ人の王イエスである」と書いた罪状書きを掲げた。
38:折から、イエスと一緒に二人の強盗が、一人は右にもう一人は左に、十字架につけられていた。
39:そこを通りかかった人々は、頭を振りながらイエスをののしって、
40:言った。「神殿を打ち倒し、三日で建てる者、神の子なら、自分を救ってみろ。そして十字架から降りて来い。」
41:同じように、祭司長たちも律法学者たちや長老たちと一緒に、イエスを侮辱して言った。
42:「他人は救ったのに、自分は救えない。イスラエルの王だ。今すぐ十字架から降りるがいい。そうすれば、信じてやろう。
43:神に頼っているが、神の御心ならば、今すぐ救ってもらえ。『わたしは神の子だ』と言っていたのだから。」
44:一緒に十字架につけられた強盗たちも、同じようにイエスをののしった。
 
◆イエスの死
45:さて、昼の十二時に、全地は暗くなり、それが三時まで続いた。
46:三時ごろ、イエスは大声で叫ばれた。「エリ、エリ、レマ、サバクタニ。」これは、「わが神、わが神、なぜわたしをお見捨てになったのですか」という意味である。
47:そこに居合わせた人々のうちには、これを聞いて、「この人はエリヤを呼んでいる」と言う者もいた。
48:そのうちの一人が、すぐに走り寄り、海綿を取って酸いぶどう酒を含ませ、葦の棒に付けて、イエスに飲ませようとした。
49:ほかの人々は、「待て、エリヤが彼を救いに来るかどうか、見ていよう」と言った。
50:しかし、イエスは再び大声で叫び、息を引き取られた。
51:そのとき、神殿の垂れ幕が上から下まで真っ二つに裂け、地震が起こり、岩が裂け、
52:墓が開いて、眠りについていた多くの聖なる者たちの体が生き返った。
53:そして、イエスの復活の後、墓から/出て来て、聖なる都に入り、多くの人々に現れた。
54:百人隊長や一緒にイエスの見張りをしていた人たちは、地震やいろいろの出来事を見て、非常に恐れ、「本当に、この人は神の子だった」と言った。
55:またそこでは、大勢の婦人たちが遠くから見守っていた。この婦人たちは、ガリラヤからイエスに従って来て世話をしていた人々である。
56:その中には、マグダラのマリア、ヤコブとヨセフの母マリア、ゼベダイの子らの母がいた。
 
◆墓に葬られる
57:夕方になると、アリマタヤ出身の金持ちでヨセフという人が来た。この人もイエスの弟子であった。
58:この人がピラトのところに行って、イエスの遺体を渡してくれるようにと願い出た。そこでピラトは、渡すようにと命じた。
59:ヨセフはイエスの遺体を受け取ると、きれいな亜麻布に包み、
60:岩に掘った自分の新しい墓の中に納め、墓の入り口には大きな石を転がしておいて立ち去った。
61:マグダラのマリアともう一人のマリアとはそこに残り、墓の方を向いて座っていた。
 
◆番兵、墓を見張る
62:明くる日、すなわち、準備の日の翌日、祭司長たちとファリサイ派の人々は、ピラトのところに集まって、
63:こう言った。「閣下、人を惑わすあの者がまだ生きていたとき、『自分は三日後に復活する』と言っていたのを、わたしたちは思い出しました。
64:ですから、三日目まで墓を見張るように命令してください。そうでないと、弟子たちが来て死体を盗み出し、『イエスは死者の中から復活した』などと民衆に言いふらすかもしれません。そうなると、人々は前よりもひどく惑わされることになります。」
65:ピラトは言った。「あなたたちには、番兵がいるはずだ。行って、しっかりと見張らせるがよい。」
66:そこで、彼らは行って墓の石に封印をし、番兵をおいた。

                                        ▲戻る


マタイによる福音書 28章1-20節

◆復活する
1:さて、安息日が終わって、週の初めの日の明け方に、マグダラのマリアともう一人のマリアが、墓を見に行った。
2:すると、大きな地震が起こった。主の天使が天から降って近寄り、石をわきへ転がし、その上に座ったのである。
3:その姿は稲妻のように輝き、衣は雪のように白かった。
4:番兵たちは、恐ろしさのあまり震え上がり、死人のようになった。
5:天使は婦人たちに言った。「恐れることはない。十字架につけられたイエスを捜しているのだろうが、
6:あの方は、ここにはおられない。かねて言われていたとおり、復活なさったのだ。さあ、遺体の置いてあった場所を見なさい。
7:それから、急いで行って弟子たちにこう告げなさい。『あの方は死者の中から復活された。そして、あなたがたより先にガリラヤに行かれる。そこでお目にかかれる。』確かに、あなたがたに伝えました。」
8:婦人たちは、恐れながらも大いに喜び、急いで墓を立ち去り、弟子たちに知らせるために走って行った。
9:すると、イエスが行く手に立っていて、「おはよう」と言われたので、婦人たちは近寄り、イエスの足を抱き、その前にひれ伏した。
10:イエスは言われた。「恐れることはない。行って、わたしの兄弟たちにガリラヤへ行くように言いなさい。そこでわたしに会うことになる。」
 
◆番兵、報告する
11:婦人たちが行き着かないうちに、数人の番兵は都に帰り、この出来事をすべて祭司長たちに報告した。
12:そこで、祭司長たちは長老たちと集まって相談し、兵士たちに多額の金を与えて、
13:言った。「『弟子たちが夜中にやって来て、我々の寝ている間に死体を盗んで行った』と言いなさい。
14:もしこのことが総督の耳に入っても、うまく総督を説得して、あなたがたには心配をかけないようにしよう。」
15:兵士たちは金を受け取って、教えられたとおりにした。この話は、今日に至るまでユダヤ人の間に広まっている。
 
◆弟子たちを派遣する
16:さて、十一人の弟子たちはガリラヤに行き、イエスが指示しておかれた山に登った。
17:そして、イエスに会い、ひれ伏した。しかし、疑う者もいた。
18:イエスは、近寄って来て言われた。「わたしは天と地の一切の権能を授かっている。
19:だから、あなたがたは行って、すべての民をわたしの弟子にしなさい。彼らに父と子と聖霊の名によって洗礼を授け、
20:あなたがたに命じておいたことをすべて守るように教えなさい。わたしは世の終わりまで、いつもあなたがたと共にいる。」
 
                                        ▲戻る 
マルコによる福音書 1章
 
◆洗礼者ヨハネ、教えを宣べる
1:神の子イエス・キリストの福音の初め。
2:預言者イザヤの書にこう書いてある。「見よ、わたしはあなたより先に使者を遣わし、/あなたの道を準備させよう。
3:荒れ野で叫ぶ者の声がする。『主の道を整え、/その道筋をまっすぐにせよ。』」そのとおり、
4:洗礼者ヨハネが荒れ野に現れて、罪の赦しを得させるために悔い改めの洗礼を宣べ伝えた。
5:ユダヤの全地方とエルサレムの住民は皆、ヨハネのもとに来て、罪を告白し、ヨルダン川で彼から洗礼を受けた。
6:ヨハネはらくだの毛衣を着、腰に革の帯を締め、いなごと野蜜を食べていた。
7:彼はこう宣べ伝えた。「わたしよりも優れた方が、後から来られる。わたしは、かがんでその方の履物のひもを解く値打ちもない。
8:わたしは水であなたたちに洗礼を授けたが、その方は聖霊で洗礼をお授けになる。」
 
◆イエス、洗礼を受ける
9:そのころ、イエスはガリラヤのナザレから来て、ヨルダン川でヨハネから洗礼を受けられた。
10:水の中から上がるとすぐ、天が裂けて“霊”が鳩のように御自分に降って来るのを、御覧になった。
11:すると、「あなたはわたしの愛する子、わたしの心に適う者」という声が、天から聞こえた。
 
◆誘惑を受ける
12:それから、“霊”はイエスを荒れ野に送り出した。
13:イエスは四十日間そこにとどまり、サタンから誘惑を受けられた。その間、野獣と一緒におられたが、天使たちが仕えていた。
 
◆ガリラヤで伝道を始める
14:ヨハネが捕らえられた後、イエスはガリラヤへ行き、神の福音を宣べ伝えて、
15:「時は満ち、神の国は近づいた。悔い改めて福音を信じなさい」と言われた。
 
◆四人の漁師を弟子にする
16:イエスは、ガリラヤ湖のほとりを歩いておられたとき、シモンとシモンの兄弟アンデレが湖で網を打っているのを御覧になった。彼らは漁師だった。
17:イエスは、「わたしについて来なさい。人間をとる漁師にしよう」と言われた。
18:二人はすぐに網を捨てて従った。
19:また、少し進んで、ゼベダイの子ヤコブとその兄弟ヨハネが、舟の中で網の手れをしているのを御覧になると、
20:すぐに彼らをお呼びになった。この二人も父ゼベダイを雇い人たちと一緒に舟残して、イエスの後について行った。
 
◆汚れた霊に取りつかれた男をいやす
21:一行はカファルナウムに着いた。イエスは、安息日に会堂に入って教え始めらた。
22:人々はその教えに非常に驚いた。律法学者のようにではなく、権威ある者としてお教えになったからである。
23:そのとき、この会堂に汚れた霊に取りつかれた男がいて叫んだ。
24:「ナザレのイエス、かまわないでくれ。我々を滅ぼしに来たのか。正体は分かっている。神の聖者だ。」
25:イエスが、「黙れ。この人から出て行け」とお叱りになると、
26:汚れた霊はその人にけいれんを起こさせ、大声をあげて出て行った。
27:人々は皆驚いて、論じ合った。「これはいったいどういうことなのだ。権威ある新しい教えだ。この人が汚れた霊に命じると、その言うことを聴く。」
28:イエスの評判は、たちまちガリラヤ地方の隅々にまで広まった。
 
◆多くの病人をいやす
29:すぐに、一行は会堂を出て、シモンとアンデレの家に行った。ヤコブとヨハネも一緒であった。
30:シモンのしゅうとめが熱を出して寝ていたので、人々は早速、彼女のことをイエスに話した。
31:イエスがそばに行き、手を取って起こされると、熱は去り、彼女は一同をもてなした。
32:夕方になって日が沈むと、人々は、病人や悪霊に取りつかれた者を皆、イエスのもとに連れて来た。
33:町中の人が、戸口に集まった。
34:イエスは、いろいろな病気にかかっている大勢の人たちをいやし、また、多くの悪霊を追い出して、悪霊にものを言うことをお許しにならなかった。悪霊はイエスを知っていたからである。
 
◆巡回して宣教する
35:朝早くまだ暗いうちに、イエスは起きて、人里離れた所へ出て行き、そこで祈っておられた。
36:シモンとその仲間はイエスの後を追い、
37:見つけると、「みんなが捜しています」と言った。
38:イエスは言われた。「近くのほかの町や村へ行こう。そこでも、わたしは宣教する。そのためにわたしは出て来たのである。」
39:そして、ガリラヤ中の会堂に行き、宣教し、悪霊を追い出された。
 
◆重い皮膚病を患っている人をいやす
40:さて、重い皮膚病を患っている人が、イエスのところに来てひざまずいて願い、「御心ならば、わたしを清くすることがおできになります」と言った。
41:イエスが深く憐れんで、手を差し伸べてその人に触れ、「よろしい。清くなれ」と言われると、
42:たちまち重い皮膚病は去り、その人は清くなった。
43:イエスはすぐにその人を立ち去らせようとし、厳しく注意して、
44:言われた。「だれにも、何も話さないように気をつけなさい。ただ、行って祭司に体を見せ、モーセが定めたものを清めのために献げて、人々に証明しなさい。」
45:しかし、彼はそこを立ち去ると、大いにこの出来事を人々に告げ、言い広め始めた。それで、イエスはもはや公然と町に入ることができず、町の外の人のいない所におられた。それでも、人々は四方からイエスのところに集まって来た。
 
                                        ▲戻る  


マルコによる福音書 2章

◆中風の人をいやす

1:数日後、イエスが再びカファルナウムに来られると、家におられることが知れ渡り、
2:大勢の人が集まったので、戸口の辺りまですきまもないほどになった。イエスが御言葉を語っておられると、
3:四人の男が中風の人を運んで来た。
4:しかし、群衆に阻まれて、イエスのもとに連れて行くことができなかったので、イエスがおられる辺りの屋根をはがして穴をあけ、病人の寝ている床をつり降ろした。
5:イエスはその人たちの信仰を見て、中風の人に、「子よ、あなたの罪は赦される」と言われた。
6:ところが、そこに律法学者が数人座っていて、心の中であれこれと考えた。
7:「この人は、なぜこういうことを口にするのか。神を冒涜している。神おひとりのほかに、いったいだれが、罪を赦すことができるだろうか。」
8:イエスは、彼らが心の中で考えていることを、御自分の霊の力ですぐに知って言われた。「なぜ、そんな考えを心に抱くのか。
9:中風の人に『あなたの罪は赦される』と言うのと、『起きて、床を担いで歩け』と言うのと、どちらが易しいか。
10:人の子が地上で罪を赦す権威を持っていることを知らせよう。」そして、中風の人に言われた。
11:「わたしはあなたに言う。起き上がり、床を担いで家に帰りなさい。」
12:その人は起き上がり、すぐに床を担いで、皆の見ている前を出て行った。人々は皆驚き、「このようなことは、今まで見たことがない」と言って、神を賛美した。
 
◆レビを弟子にする
13:イエスは、再び湖のほとりに出て行かれた。群衆が皆そばに集まって来たので、イエスは教えられた。
14:そして通りがかりに、アルファイの子レビが収税所に座っているのを見かけて、「わたしに従いなさい」と言われた。彼は立ち上がってイエスに従った。
15:イエスがレビの家で食事の席に着いておられたときのことである。多くの徴税人や罪人もイエスや弟子たちと同席していた。実に大勢の人がいて、イエスに従っていたのである。
16:ファリサイ派の律法学者は、イエスが罪人や徴税人と一緒に食事をされるのを見て、弟子たちに、「どうして彼は徴税人や罪人と一緒に食事をするのか」と言った。
17:イエスはこれを聞いて言われた。「医者を必要とするのは、丈夫な人ではなく病人である。わたしが来たのは、正しい人を招くためではなく、罪人を招くためである。」
 
◆断食についての問答
18:ヨハネの弟子たちとファリサイ派の人々は、断食していた。そこで、人々はイエスのところに来て言った。「ヨハネの弟子たちとファリサイ派の弟子たちは断食しているのに、なぜ、あなたの弟子たちは断食しないのですか。」
19:イエスは言われた。「花婿が一緒にいるのに、婚礼の客は断食できるだろうか。花婿が一緒にいるかぎり、断食はできない。
20:しかし、花婿が奪い取られる時が来る。その日には、彼らは断食することになる。
21:だれも、織りたての布から布切れを取って、古い服に継ぎを当てたりはしない。そんなことをすれば、新しい布切れが古い服を引き裂き、破れはいっそうひどくなる。
22:また、だれも、新しいぶどう酒を古い革袋に入れたりはしない。そんなことをすれば、ぶどう酒は革袋を破り、ぶどう酒も革袋もだめになる。新しいぶどう酒は、新しい革袋に入れるものだ。」
 
◆安息日に麦の穂を摘む
23:ある安息日に、イエスが麦畑を通って行かれると、弟子たちは歩きながら麦の穂を摘み始めた。
24:ファリサイ派の人々がイエスに、「御覧なさい。なぜ、彼らは安息日にしてはならないことをするのか」と言った。
25:イエスは言われた。「ダビデが、自分も供の者たちも、食べ物がなくて空腹だったときに何をしたか、一度も読んだことがないのか。
26:アビアタルが大祭司であったとき、ダビデは神の家に入り、祭司のほかにはだれも食べてはならない供えのパンを食べ、一緒にいた者たちにも与えたではないか。」
27:そして更に言われた。「安息日は、人のために定められた。人が安息日のためにあるのではない。
28:だから、人の子は安息日の主でもある。」
                                        ▲戻る 

マルコによる福音書 3章
 
◆手の萎えた人をいやす
1:イエスはまた会堂にお入りになった。そこに片手の萎えた人がいた。
2:人々はイエスを訴えようと思って、安息日にこの人の病気をいやされるかどうか、注目していた。
3:イエスは手の萎えた人に、「真ん中に立ちなさい」と言われた。
4:そして人々にこう言われた。「安息日に律法で許されているのは、善を行うことか、悪を行うことか。命を救うことか、殺すことか。」彼らは黙っていた。
5:そこで、イ